管理人黒峰の日々の徒然。
主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
本編最終話にて、特区式典会場でスザクが「イエス・ユアハイネス」って言おうとしたのをユフィが遮った経緯についての妄想SSであります(´∀`)
先に書いた追悼SSの前編、という形です。
久しぶりにほのぼの仲良しーな騎士姫が書けて幸せでした…!
や、相変わらず若干シリアス混ざってるんですけど。笑
珍しくシュナ様が登場します。義兄として義妹の恋を見守ってますw
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)
先に書いた追悼SSの前編、という形です。
久しぶりにほのぼの仲良しーな騎士姫が書けて幸せでした…!
や、相変わらず若干シリアス混ざってるんですけど。笑
珍しくシュナ様が登場します。義兄として義妹の恋を見守ってますw
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)
「え…」
目の前が暗転しかけた。
時が止まったんじゃないかって、一瞬思った。
時が止まったんじゃないかって、一瞬思った。
いっそ止まってしまえばいいと、一瞬だけ思った。
「今…なんて…?」
「ごめんなさい、スザク。」
「ごめんなさい、スザク。」
ユフィの微笑みが、ひどく哀しそうに見えた。
チェリー ~Ep.00~
チェリー ~Ep.00~
「ユーフェミア様?」
トントン、とユフィのいるであろう執務室の扉を二回ノックする。
放課後、アッシュフォード学園を出た後すぐに、他でもないユフィに呼び出しを受けたスザクは急いで彼女の元へやってきた。
おかげでいつもはきちんと身なりを整えてから謁見するのだが、正装に着替える間も惜しかったので今日は制服のままで対面することにした。
…一応ブリタニアの学校の制服だし、問題はないよな、なんてイマイチ自信なさげに彼女からの返事を待つ間に服装の乱れを確かめる。
ノックする前にも一度正したのだが、その時は走ってきたせいで途中で暑苦しくなって開けていた首元を直したり、なんだか埃っぽく思えて急いではたいたりしていたので、細かいところを気にしていなかった。
相手は神聖ブリタニア帝国の第三皇女であり、何よりも騎士として自分が守るべき女性である。服装一つでも失礼は許されない。
とはいえ、ユフィ自身は特に気にしていない(むしろ嫌がっている)のだが…。
おかげでいつもはきちんと身なりを整えてから謁見するのだが、正装に着替える間も惜しかったので今日は制服のままで対面することにした。
…一応ブリタニアの学校の制服だし、問題はないよな、なんてイマイチ自信なさげに彼女からの返事を待つ間に服装の乱れを確かめる。
ノックする前にも一度正したのだが、その時は走ってきたせいで途中で暑苦しくなって開けていた首元を直したり、なんだか埃っぽく思えて急いではたいたりしていたので、細かいところを気にしていなかった。
相手は神聖ブリタニア帝国の第三皇女であり、何よりも騎士として自分が守るべき女性である。服装一つでも失礼は許されない。
とはいえ、ユフィ自身は特に気にしていない(むしろ嫌がっている)のだが…。
「それじゃあ…私はこれで。ユフィ」
「…はい、お兄様」
「いつでも…というわけには流石にいかないだろうけど、会いにおいで。」
「ありがとうございます」
「…はい、お兄様」
「いつでも…というわけには流石にいかないだろうけど、会いにおいで。」
「ありがとうございます」
―…シュナイゼル殿下の声?
少しばかり長い間の後、扉の奥からユフィの声と、そしてその兄であり第二皇子であるシュナイゼルの声がした。
金色の豪華な造りをしたノブが独りでに沈んで、扉が開かれる。
金色の豪華な造りをしたノブが独りでに沈んで、扉が開かれる。
「…あぁ、スザクくん」
中から出てきたシュナイゼルはスザクの姿を見て立ち止まった。
整った顔立ちは女性ならば思わず誰しも見惚れてしまうような綺麗な笑みを造っている。
特徴的な甘い声に、キラキラと光に反射して透き通るような色素の薄い髪。落ち着いた物腰。
いつも通りの彼の仕草を認めて、スザクはすぐさま頭を下げた。
整った顔立ちは女性ならば思わず誰しも見惚れてしまうような綺麗な笑みを造っている。
特徴的な甘い声に、キラキラと光に反射して透き通るような色素の薄い髪。落ち着いた物腰。
いつも通りの彼の仕草を認めて、スザクはすぐさま頭を下げた。
「お久しぶりです、シュナイゼル殿下」
「久しぶりだね。…ユフィに呼ばれたのかな?」
「あ、はい」
「悪かったね。つい話し込んでしまって。ユフィ、スザクくんが来ているよ」
「久しぶりだね。…ユフィに呼ばれたのかな?」
「あ、はい」
「悪かったね。つい話し込んでしまって。ユフィ、スザクくんが来ているよ」
そう言ってシュナイゼルは部屋の中のユフィを呼んだ。
呼ばれて扉の隙間からひょこっと顔を出したユフィは、スザクの顔を見てぱあっと花が咲いたように笑う。
呼ばれて扉の隙間からひょこっと顔を出したユフィは、スザクの顔を見てぱあっと花が咲いたように笑う。
「スザク!」
「遅くなりました、ユーフェミア様」
「突然呼び出したのは私です。来てくれてありがとう」
「遅くなりました、ユーフェミア様」
「突然呼び出したのは私です。来てくれてありがとう」
頭を下げたスザクの傍に駆け寄って、ユフィはまた微笑んだ。
「…じゃあユフィ、また」
「あ、はい。シュナイゼルお兄様。」
「あ、はい。シュナイゼルお兄様。」
シュナイゼルはにこりと笑って返した。
何故か、いつもの綺麗な微笑が、少し翳って見えたのだが。
何故か、いつもの綺麗な微笑が、少し翳って見えたのだが。
シュナイゼルはスザクにも挨拶をする。
「スザクくん。…これからもよろしく頼むよ。特派のこと、それと…ユフィのこと。」
「え、あ、イエス・マイロード」
「お兄様!」
「え、あ、イエス・マイロード」
「お兄様!」
シュナイゼルは一つ笑って、名残惜しそうに二人を眺めた後廊下の向こうに消えていった。
純粋に“騎士として”妹を守ってほしいという意味で解釈しているスザクは平生を保っているが、一方からかわれたユフィといえば、頬を少し膨らませて兄の背中が消えてもまだ同じ方向を眺めていた。
純粋に“騎士として”妹を守ってほしいという意味で解釈しているスザクは平生を保っているが、一方からかわれたユフィといえば、頬を少し膨らませて兄の背中が消えてもまだ同じ方向を眺めていた。
「もう…」
「…ユフィ?」
「…ユフィ?」
周囲に誰もいないことを確認し、スザクはユフィの名前を呼ぶ。周りに誰もいないときはこう呼ぶのが二人の間にある約束のひとつだ。
「スザク、ごめんなさい呼んでおいたのに。…とりあえず入って」
「はい、失礼します」
「はい、失礼します」
ユフィの後について中に入り、スザクは扉を閉めて彼女と向かい合う。
「…学校は楽しいですか?」
ユフィはそう切り出した。
「はい。今は友達もいますし、前にも言ったとおり生徒会でも仕事をさせてもらっています。充実していますよ」
まだ僅かに陰湿な悪戯があったりはするが、ユフィの騎士となったことで随分と風当たりも弱くなったように思う。
生徒会に入っているおかげか、自分と臆さずに話してくれる生徒も徐々に増えている。
ルルーシュとも再会できて、本当に、ユフィには感謝してもしきれない。
生徒会に入っているおかげか、自分と臆さずに話してくれる生徒も徐々に増えている。
ルルーシュとも再会できて、本当に、ユフィには感謝してもしきれない。
「そうですか。良かった…。制服もよく似合ってます。…私も着てみたいです…なんて」
ユフィはそう言って悪戯っぽく笑った。
本当に楽しそうで良かった。学校行きを薦めた身として、これ以上嬉しいことはない。
自分が途中で学校をやめてしまったから、気になっていたのもある。行けるなら、やはり行ったほうが良いと自分は思うのだ。
本当に楽しそうで良かった。学校行きを薦めた身として、これ以上嬉しいことはない。
自分が途中で学校をやめてしまったから、気になっていたのもある。行けるなら、やはり行ったほうが良いと自分は思うのだ。
「アッシュフォード学園での生活は、楽しいんですね…」
「…ユフィ?」
「…ユフィ?」
ユフィは少し、言葉を捜しているように思案顔になる。
「…いえ、なんでもないです。気になっていたので聞いただけですから。お兄様も心配してました」
「あ、シュナイゼル殿下、こちらにいらしていたんですね。」
「この後すぐに発つと仰っていましたけど。わざわざ会いにきてくれたんです…」
「ユフィに?…仲が良いんですね」
「あ、シュナイゼル殿下、こちらにいらしていたんですね。」
「この後すぐに発つと仰っていましたけど。わざわざ会いにきてくれたんです…」
「ユフィに?…仲が良いんですね」
「最後だから。」
「え?」
俯いたユフィから聞かされた言葉に、戸惑うしかなかった。
「お兄様…いえ、お姉様にも。頻繁に会うことはもう…出来ないから」
ユフィの表情が曇る。
息が詰まるような気持ちがした。どうしてだろう、息苦しい。
息が詰まるような気持ちがした。どうしてだろう、息苦しい。
「…それは、何故?」
「返上したんです。」
「?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニアは、特区日本設立とともにその役目を終えます。」
「…どういう……」
「返上したんです。」
「?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニアは、特区日本設立とともにその役目を終えます。」
「…どういう……」
「皇位継承権を、ブリタニアの名を背負うことを、終えるのです。」
「え……」
目の前が、暗転したように錯覚した。
「今…なんて…?」
「ごめんなさい、スザク。」
ユフィの微笑みはどこまでも穏やかだった。
少しだけ、哀しそうにも見えたが。
今日はこの話をするために貴方をここへ呼びました、と静かに告げるユフィの声が切なく響く。
「もっと早く話すべき…いいえ、貴方には本来一番に話すべきだったのに。」
「…どういうことですか……説明してください!」
身を引き裂かれたような、そんな悲痛な顔をするスザクに、ユフィはそっとその手を握った。
「分かっています。ちゃんと、話しますから。長くなりそうですから…とりあえず座ってください」
ユフィに手を引かれるまま、スザクは高価そうなソファの前まで導かれる。
それから手を放したユフィもその隣に腰掛けた。
柔らかいクッションに腰を下ろした自分の身体はまるで蛻の殻とでも言うように軽かった。
「先程言ったように、私は特区日本の設立を期に皇位継承権を失うことになりました。」
あくまで毅然とした態度で話すユフィから、この話が真実であると容易に解釈できる。
見た目とは裏腹に意志の強い彼女がこの話を曲げるつもりがないことも、自分が理解するしかないということも。
それだけに言葉が出なかった。
「設立後すぐ、というわけではないでしょう。…でも、いずれ正式に発表されます。」
「それは…本国の要請ですか」
“日本”を認めた彼女を、“ゼロ”を呼びかけたユフィをブリタニア側が許可しなかったのかもしれない。
皇帝の意向に逆らったユフィを、制裁する手段として…。
そうであれば、自分はきっとブリタニアを、恨んでしまうだろう。今まで以上に。
しかし、ユフィの答えはそうではなかった。
「一概にそうとは言えません。私の希望したことではない。でも私のしたかったことを実現するには、これが必要なんです」
ユフィは真っ直ぐにスザクを見た。
「学園祭の時に宣言した通り、私が提案した特区日本にはゼロを迎え入れることが理想です」
「…はい」
「彼もまた、…我が国の領土拡大の犠牲者です。ですから私は、特区に彼を向かえることで、今のテロ活動の沈静化を図れると考えました。」
「はい」
「権利を認めなければ、支配を免れなければ、彼らは活動を終わらせないでしょう」
ルルーシュが、ナナリーがブリタニアの干渉を受けずに生きていける世界は、あそこにしかないと思うから。
「けれど彼らは、ブリタニアに対するテロ組織。その活動で多くの命が失われました」
「はい…」
多くのブリタニア軍人が毎日のようにその命を落としているのを自分は知っている。
また、戦場となった地に住んでいた軍とは無関係な一般人の命が犠牲になっていることも。
「その組織の人間、まして首謀者を迎えたいというのです。そう願う私には、もう皇位継承権を与えられる権利がない。だから…」
「だから貴女は、ブリタニアの名を捨てると?」
「はい、そうです」
あっさり言ってのけるユフィの瞳に、迷いの色はなかった。
「ごめんなさい、スザク。」
ユフィの微笑みはどこまでも穏やかだった。
少しだけ、哀しそうにも見えたが。
今日はこの話をするために貴方をここへ呼びました、と静かに告げるユフィの声が切なく響く。
「もっと早く話すべき…いいえ、貴方には本来一番に話すべきだったのに。」
「…どういうことですか……説明してください!」
身を引き裂かれたような、そんな悲痛な顔をするスザクに、ユフィはそっとその手を握った。
「分かっています。ちゃんと、話しますから。長くなりそうですから…とりあえず座ってください」
ユフィに手を引かれるまま、スザクは高価そうなソファの前まで導かれる。
それから手を放したユフィもその隣に腰掛けた。
柔らかいクッションに腰を下ろした自分の身体はまるで蛻の殻とでも言うように軽かった。
「先程言ったように、私は特区日本の設立を期に皇位継承権を失うことになりました。」
あくまで毅然とした態度で話すユフィから、この話が真実であると容易に解釈できる。
見た目とは裏腹に意志の強い彼女がこの話を曲げるつもりがないことも、自分が理解するしかないということも。
それだけに言葉が出なかった。
「設立後すぐ、というわけではないでしょう。…でも、いずれ正式に発表されます。」
「それは…本国の要請ですか」
“日本”を認めた彼女を、“ゼロ”を呼びかけたユフィをブリタニア側が許可しなかったのかもしれない。
皇帝の意向に逆らったユフィを、制裁する手段として…。
そうであれば、自分はきっとブリタニアを、恨んでしまうだろう。今まで以上に。
しかし、ユフィの答えはそうではなかった。
「一概にそうとは言えません。私の希望したことではない。でも私のしたかったことを実現するには、これが必要なんです」
ユフィは真っ直ぐにスザクを見た。
「学園祭の時に宣言した通り、私が提案した特区日本にはゼロを迎え入れることが理想です」
「…はい」
「彼もまた、…我が国の領土拡大の犠牲者です。ですから私は、特区に彼を向かえることで、今のテロ活動の沈静化を図れると考えました。」
「はい」
「権利を認めなければ、支配を免れなければ、彼らは活動を終わらせないでしょう」
ルルーシュが、ナナリーがブリタニアの干渉を受けずに生きていける世界は、あそこにしかないと思うから。
「けれど彼らは、ブリタニアに対するテロ組織。その活動で多くの命が失われました」
「はい…」
多くのブリタニア軍人が毎日のようにその命を落としているのを自分は知っている。
また、戦場となった地に住んでいた軍とは無関係な一般人の命が犠牲になっていることも。
「その組織の人間、まして首謀者を迎えたいというのです。そう願う私には、もう皇位継承権を与えられる権利がない。だから…」
「だから貴女は、ブリタニアの名を捨てると?」
「はい、そうです」
あっさり言ってのけるユフィの瞳に、迷いの色はなかった。
「でも…でも、だからって!そんな簡単に…!」
ゼロは色んなものを奪ってきた。多くの人の平和、生活、命。
ユフィを危険にさらしたことだって幾度もある。シャーリーから彼女の父親まで奪ったこともある。
そんな人物に対して、ユフィがそこまで配慮してやるのが正直納得できなかった。
いくらユフィの言うことでも、どうしても許せない。
一人の人間として。ブリタニア軍人として。ユフィの騎士として。彼女を想う、男として。
「それに、そんなことになればコーネリア総督や、シュナイゼル殿下とも…っ」
「そうですね。お姉様やお兄様にも、気軽に会うことも出来なくなってしまいます」
先程シュナイゼルが仕事の合間を縫って自分に会いに来てくれたのはこのためだった。
ユフィの真意を確かめることと、しばしの別れを告げるために。
「だったら…!」
「でもねスザク。それは寂しいことだけど、私にとって大切なのは、特区日本の成功なの。」
「そのために、ゼロの存在が必要なんですか…?」
「はい」
日本人の心が、どうか少しだけでも、救われればいいと思った。
今まで踏みにじってきた分だけの傷を癒すことは出来ないかも知れないけれど、少しでも、救いになりたかった。
それに、ナナリーが。
ナナリーが、ただルルーシュと一緒に生きていけることを望んでいたから。
その望みを叶えたいと、真っ直ぐに想うことが出来たから。
ナナリー。ルルーシュ。大好きな妹。大好きな兄。
生きていた。二人とも、生きていてくれた。
幼い頃別れて、ただただ寂しくて、哀しくて、愛しくて。
日本で死んでしまったと聞かされた時は、何日も何日も、目が腫れても、涙が枯れることはなかった。
実感はなかったけれど、もう二度と会えないんだということだけは分かったから、ただ泣いていた。
慰めてくれる姉の腕の中で一緒に、毎日涙に暮れていた。
明日が怖かった。明日になっても、二人は会いにきてはくれないから。
「ゼロを迎え入れることは、私にとって一番大切なことの一つだったから。」
ナナリー。
大好きな義妹。大人しい子だけれど、意外と可愛い我が侭を言ったりもして。
コーネリアと生きていた自分にとって、本当の妹が出来たみたいでとても嬉しかった。
いつでもルルーシュが大好きで。一緒にルルーシュを困らせたり、彼に世話を焼かせたり、甘えてみたり。
マリアンヌ様の事件で身体を不自由にした時は、心配でたまらなかった。
ルルーシュ。
きっと、初めて恋をした人。頭が良くて物静かだけど、本当は世話焼きで、優しい義兄。
優しくしてくれていたシュナイゼルよりもずっと年が近くて、兄であり、一日中遊んだり出来る友達の様な関係だった。
いつもナナリーのことを想っていて。我が侭を言われても断れなくて。姿が見えないといつも心配ばかり。でもちゃんと叱ることも出来て。
あの事件の時以来、あまり話をする機会もなくて。少しだけ、変わってしまったんじゃないかって怖かった。
でも、生きていてくれた。二人とも。
もう一度顔を見ることが出来るなんて。もう一度声が聞けるなんて。今度は嬉しくて涙が溢れた。
ルルーシュが、ゼロの正体がルルーシュだと気付いたとき、どうすれば良いのか判らなくなった。
哀しかった。でも、当然よ。彼らがブリタニアを、私達を恨んでいるのは当たり前。それも含めて、悲しかった。
だからね、ルルーシュ。
もう二度と、あんな別れ方、したくないの。
このまま「黒の騎士団」を続けていけば、いずれナナリーとも一緒にいられなくなる。
そうなったら、貴方の隣だけを望んでいるナナリーはどうすれば良いの?
そうなったらルルーシュ。貴方は、一人でどうするの?
…そんなこと、私がさせない。
「だから私は…もう決めたの。」
「ユフィ…」
スザクの顔が悲痛に歪む。
「…優しすぎます、スザク。貴方がそんな顔をする必要はないのに」
ユフィはスザクの頬にそっと手を添える。
今にも泣き出しそうな顔をしているスザク。彼はユフィがゼロを保護する本当の理由を知らない。
ただ自分を想って、こんな顔をしてくれているのだ。
「ありがとう」
ユフィが微笑むと、スザクは堪らなくなったように彼女を抱きしめた。
「我が侭ばかり言って…ごめんね」
初めて出会った時、一緒に街を歩いてほしいと言った時も。好きだと言った時も、騎士になってほしいと言った時も我が侭ばかりだった。
だからこれが、最後の我が侭。
「だからもう…」
「ユフィ?」
「だからもう、スザク。戻ってください」
「え?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士ではなく、元の“枢木スザク”に戻って良いんですよ」
ゼロは色んなものを奪ってきた。多くの人の平和、生活、命。
ユフィを危険にさらしたことだって幾度もある。シャーリーから彼女の父親まで奪ったこともある。
そんな人物に対して、ユフィがそこまで配慮してやるのが正直納得できなかった。
いくらユフィの言うことでも、どうしても許せない。
一人の人間として。ブリタニア軍人として。ユフィの騎士として。彼女を想う、男として。
「それに、そんなことになればコーネリア総督や、シュナイゼル殿下とも…っ」
「そうですね。お姉様やお兄様にも、気軽に会うことも出来なくなってしまいます」
先程シュナイゼルが仕事の合間を縫って自分に会いに来てくれたのはこのためだった。
ユフィの真意を確かめることと、しばしの別れを告げるために。
「だったら…!」
「でもねスザク。それは寂しいことだけど、私にとって大切なのは、特区日本の成功なの。」
「そのために、ゼロの存在が必要なんですか…?」
「はい」
日本人の心が、どうか少しだけでも、救われればいいと思った。
今まで踏みにじってきた分だけの傷を癒すことは出来ないかも知れないけれど、少しでも、救いになりたかった。
それに、ナナリーが。
ナナリーが、ただルルーシュと一緒に生きていけることを望んでいたから。
その望みを叶えたいと、真っ直ぐに想うことが出来たから。
ナナリー。ルルーシュ。大好きな妹。大好きな兄。
生きていた。二人とも、生きていてくれた。
幼い頃別れて、ただただ寂しくて、哀しくて、愛しくて。
日本で死んでしまったと聞かされた時は、何日も何日も、目が腫れても、涙が枯れることはなかった。
実感はなかったけれど、もう二度と会えないんだということだけは分かったから、ただ泣いていた。
慰めてくれる姉の腕の中で一緒に、毎日涙に暮れていた。
明日が怖かった。明日になっても、二人は会いにきてはくれないから。
「ゼロを迎え入れることは、私にとって一番大切なことの一つだったから。」
ナナリー。
大好きな義妹。大人しい子だけれど、意外と可愛い我が侭を言ったりもして。
コーネリアと生きていた自分にとって、本当の妹が出来たみたいでとても嬉しかった。
いつでもルルーシュが大好きで。一緒にルルーシュを困らせたり、彼に世話を焼かせたり、甘えてみたり。
マリアンヌ様の事件で身体を不自由にした時は、心配でたまらなかった。
ルルーシュ。
きっと、初めて恋をした人。頭が良くて物静かだけど、本当は世話焼きで、優しい義兄。
優しくしてくれていたシュナイゼルよりもずっと年が近くて、兄であり、一日中遊んだり出来る友達の様な関係だった。
いつもナナリーのことを想っていて。我が侭を言われても断れなくて。姿が見えないといつも心配ばかり。でもちゃんと叱ることも出来て。
あの事件の時以来、あまり話をする機会もなくて。少しだけ、変わってしまったんじゃないかって怖かった。
でも、生きていてくれた。二人とも。
もう一度顔を見ることが出来るなんて。もう一度声が聞けるなんて。今度は嬉しくて涙が溢れた。
ルルーシュが、ゼロの正体がルルーシュだと気付いたとき、どうすれば良いのか判らなくなった。
哀しかった。でも、当然よ。彼らがブリタニアを、私達を恨んでいるのは当たり前。それも含めて、悲しかった。
だからね、ルルーシュ。
もう二度と、あんな別れ方、したくないの。
このまま「黒の騎士団」を続けていけば、いずれナナリーとも一緒にいられなくなる。
そうなったら、貴方の隣だけを望んでいるナナリーはどうすれば良いの?
そうなったらルルーシュ。貴方は、一人でどうするの?
…そんなこと、私がさせない。
「だから私は…もう決めたの。」
「ユフィ…」
スザクの顔が悲痛に歪む。
「…優しすぎます、スザク。貴方がそんな顔をする必要はないのに」
ユフィはスザクの頬にそっと手を添える。
今にも泣き出しそうな顔をしているスザク。彼はユフィがゼロを保護する本当の理由を知らない。
ただ自分を想って、こんな顔をしてくれているのだ。
「ありがとう」
ユフィが微笑むと、スザクは堪らなくなったように彼女を抱きしめた。
「我が侭ばかり言って…ごめんね」
初めて出会った時、一緒に街を歩いてほしいと言った時も。好きだと言った時も、騎士になってほしいと言った時も我が侭ばかりだった。
だからこれが、最後の我が侭。
「だからもう…」
「ユフィ?」
「だからもう、スザク。戻ってください」
「え?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士ではなく、元の“枢木スザク”に戻って良いんですよ」
ブリタニアの名を失ってしまえば、もう騎士をもつ意味も資格もない。
任命から解任まで、最初から最後まで我が侭でごめんなさい。でもこれで、解放出来る。
「なっ……ユフィ!」
「私の皇位継承権返上の正式発表の際、同時に発表されます。それからは今までどおり、技術部で働いてください」
「ちょっと待って」
「お姉様のこと、これからもよろしくお願いしますね」
「ユフィ、聞いて」
「それから…」
「ユフィ!」
目を合わそうとせず、ただ話し続けるユフィの肩を掴んで制す。
「……そんな顔で言われても、説得力ないですよ」
俯いたユフィの顔を覗きこむと、どことなく拗ねたような顔をしていた。
「…です」
ユフィはぽつりとこぼした。
「嫌、です。スザクと、離れたくない」
また我が侭しか言えない。
でも、一緒に来てほしいなんて言ったら、優しいスザクはきっと断れない。
皇位継承権も、皇帝になることも、大好きな姉達と頻繁に会えることも、名前も、捨てることが出来たのに。
これだけは、スザクの傍にいることだけは、譲りたくない。
言うつもりなんてなかったのに、気持ちが溢れて声になってしまう。
「スザクと一緒に…いたいんです…!」
初めてこんな気持ちになった。
副総督として日本に来ることになって、通っていた学校と友達に別れを告げた時とも違う。
散々遊んで、ルルーシュやナナリーと別れる時間になった時とも違う。
離れたくない。別れたくない。譲りたくない。傍にいて。隣にいて。ここにいて。
「ユフィ、僕は」
「ただの私では、何の助けにもなれないかもしれないけど、それでも…っ」
―それでも、傍にいたいと願っても良い?
その言葉は合わせた唇と空気に溶けた。
あまりにも突然すぎて、ユフィは目を丸くする。
「…ただのユフィなら、今までよりもずっと、たくさん傍にいられる。…違う?」
「スザク…」
スザクは優しく微笑んでいる。
確かに、皇女という身分をはずせば、もっと自由に堂々と逢うことができる。
スザクがユフィを何と呼ぼうと、咎められることもない。
「でも…」
スザクの望みは「戦争のない世界をつくること」。スザクを騎士にしたのも、その望みあってこそのことだった。
その望みの為なら、自分にも何か出来るかもしれないと思っていたから。
けれど皇女としての権限がない自分は、何の役にも立たないかもしれない。それが怖い。
「ユフィが皇女でなくなっても、君は僕の一番大切な人だし、君を守りたい。この気持ちは変わらない。それに…」
「……?」
スザクは小さく笑った。
「好きになりなさい、そう言ったのはユフィの方だろ?」
「あ、あれは…」
「僕を大好きになってくれるとも言った」
「………」
ユフィはかあっと頬を染める。
「だから僕は、君の傍にいる。…もちろん、ユフィが嫌だって言うなら仕方ないけど」
「そんな…っ、こと、は……」
「正式な君の騎士じゃなくなるけれど、それでも必要としてくれるなら」
スザクは手を差し伸べた。
「もう一度、隣にいることを許してくれる?」
ユフィのくれる笑顔が、優しさが、ぬくもりが、今までの自分をここに繋ぎとめてくれていた。
君が手を伸ばしてくれていなかったら、自分はどうなっていただろう。
アッシュフォード学園など近寄りもせず、ルルーシュ達とも出会えずにいただろう。
ブリタニア人からも日本人からも中傷を浴びせられ続け、ただそれに耐えて。
そんな日々から救ってくれたのは、突然空から降ってきた、たった一人の女の子だった。
皇女だとか、ブリタニアだとか関係なく。僕の世界を開いてくれた女の子。
他の誰でもない。今目の前にいる、大切な、大切な人。
「大好きだよ、ユフィ」
「……っ」
薄紫の瞳から涙が零れた。
「それとも、好きな人の傍にいたいと想うのは間違ってるかな」
ユフィは両手で顔を覆い、懸命に首を横に振った。
もう一度、この手を重ねても良いの?
あなたの手を、とっても良いの?
「スザク」
「はい」
覆っていた手を伸ばして、ユフィは差し出されたスザクの手の上に自分のそれを重ねた。
きっと、今の自分はひどい顔をしているのだろう。涙でくしゃくしゃになって。
でも、これ以上ないくらい、幸せだから。
ユフィは少し腫れた瞳を柔らかく細める。
「いてください。私の傍に、ずっと。」
合わせるようにスザクも笑った。
「イエス・ユア…」
「違いますよ」
ユフィの人差し指がスザクの唇にそっと触れる。
「もう騎士と皇女じゃ、ないんですから。ね?」
「……そうでした。じゃあ…」
スザクは合わせた手を引いて、引き寄せたユフィを腕の中に収めた。
「…大好きです、スザク。傍にいてください」
「はい、ユフィ」
もう一度二人は笑いあって、キスをする。
ありがとう。ごめんなさい。
たくさんの言葉は、これから続いていく長い長い未来の中においておこう。
たくさん話をしよう。今までの分。
そして何度でも、君が好きだと囁こう。
この手を重ねていられなくなるまで、ずっとずっと。
優しい君の手を、どうかこのまま離さないで。
ねぇユフィ?
簡単には、離さないよ?
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