管理人黒峰の日々の徒然。
主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
つなひば♀続編です。誕生日に完結です。
【注意事項おさらい】
・以前別館で掲載していたリボーンのつなひば(※逆にもなります)小説です。
・ツナさんの方が年上です。委員長は後輩です。
・雲雀さんの性別がおにゃのこです。女子です。
この回はデレッデレなツナヒバツナです。お付き合いしています。
タイトルはお題として空飛ぶ青い何か。様よりお借りしています。
【注意事項おさらい】
・以前別館で掲載していたリボーンのつなひば(※逆にもなります)小説です。
・ツナさんの方が年上です。委員長は後輩です。
・雲雀さんの性別がおにゃのこです。女子です。
この回はデレッデレなツナヒバツナです。お付き合いしています。
タイトルはお題として空飛ぶ青い何か。様よりお借りしています。
「ひーばーりさんっ!」
先にノックをするのを忘れずに、応接室の扉を開いた。
一日の学生の義務とやらが終わり、ようやく訪れた放課後に高まったテンションが隠しきれず、思わず声が弾む。
中にいるであろう人を想い、一応声量は抑えたつもりだ。
「あぁ、君か」
「…雲雀さん…せっかく恋人に会ったんですから、もうちょっと嬉しそうな顔してくれても…」
書類片手にデスクワークに勤しんでいた雲雀さんはチラリと窺うようにだけこちらを見た。
そしてすぐにまた視線を紙面に戻す。
「だって昼休みも会ったじゃない」
「午後の授業があったじゃないですか!…って雲雀さんは出てないんだっけ」
「うん」
「でも俺は出てたんです!寂しかったんですよっ!」
「ふぅん」
素っ気ない。実に素っ気ない。
まぁ今に始まったことじゃないけどさ。
これでも一応、付き合ってるんだけどな。
「……不満そうな顔だね」
「…少し。」
「………まぁ、書類を見るのにも飽きてたし、気分転換にはなるかな」
でもこういう雲雀さんなりの気遣いに気付いてるから、
「お茶、飲む?」
「はいっ」
上手くいってるんだと俺は思う。
『殺されるっ』
「はぁ~、温まる~」
淹れてくれた紅茶の香りを堪能していると、なんとなく機嫌の良さそうな雲雀さんの顔が見えた。
昼休みに飲んだ紅茶とは違う香りがして少し嬉しくなる。
晴れて雲雀さんと付き合うことになって約三ヶ月。
クラスも学年も違う俺達は会う機会が少ない。
だから毎日昼休みと放課後に応接室で待ち合わせて…というか俺がお邪魔してる感じだけど。
お昼をとったり彼女の仕事を見てたり。
それが唯一の二人の時間。
「この紅茶美味しいですね!甘めだけど後味さっぱりしてて」
「前から試してみたくて取り寄せていた茶葉でね、さっき届いたんだよ」
寒くなるにつれて、雲雀さんはお手製の紅茶を振舞ってくれるようになった。温まるんだ、これが。
「あ、じゃあこれが最初に飲んだってことですか」
「…そういうことだね。」
ペンを走らせていた手を止めて、雲雀さんは頷いた。
(あ、ちょっと照れてる。)
そんなわけで、この時間は一日の疲れを癒す至福の時というヤツだ。
「雲雀さん、また昼休み終わってからずっと仕事してたんですか?」
「年末が近いからね。色々行事もあるし、風紀が乱れるから」
今度はカップを片手に書類を眺めている。
年末というか一年通して並盛で暗躍する風紀委員は相変わらず忙しそうだ。
「衣替えとか文化祭とかがあると浮き足立つ草食動物が多くて困るよ。」
「その分咬み殺せるって、こないだ嬉しそうにしてたじゃないですか」
「手間が増えるのは喜ばしくないでしょ」
そう言ってのけて、紙面にペンを走らせる。何かサインしている感じだ。
「……ねぇ、なんとなくだけど…そわそわしてない?」
「ふぇっ?!な、なんでですか?」
「だからなんとなく」
完全に目線は書類しか見てないのに、どうやって感じてるんだこの人は。
本当に肉食獣みたいじゃないか…とは思っても言わない。
「き、気のせいじゃないですかね?」
「………別に良いけど」
納得した顔じゃないよ、全然。
俺のことなんてまったく見てないような素振りなのに、こういうところは敏感すぎてよく驚かされる。
そう、雲雀さんの言った事はずばり当たっているわけで。
「君が落ち着きがないのはいつものことだしね」
「そうそう…ってそれはあんまりです!」
俺にはひとつの野望がある。
本日の応接室デートにはちゃんと目標があるんだ。
多くの世間一般の恋人達が踏むであろうステップであり、俺達が抜かしてきたステップ。
そう…今日の俺の目標は、雲雀さんと手を繋いで帰ること!
「…変な事は考えない方が良いよ。」
「っ!」
ひとまず落ち着こうと思って口に含んだ紅茶が逆にむせ返ってきた。危ない。
心の声を読まれたかのような忠告にまたしても驚いた。
「……雲雀さん、実はテレパシーとか出来たりしませんよね?」
「ワオ、本当に考えてたの?」
「ちっ、違いますよッ!」
慌てて否定した。
薄い脳みそでうっかり自白するところだった。
だってこんな目標言ったりしたら、あっさり拒否されるか笑って済まされるしかない気がする。
……悲しくなってきた。
「あくまでもしもの話で…」
「そうだね、読心術は面白いかもね」
「え?」
「また君がキスしたいとか考えてたら、それで分かるでしょ」
「!!」
大胆な発言を平気で言うもんだから、必要以上に真っ赤になってしまった。
ずるい。ずるいよ雲雀さん。
「あの時はそんなことされるなんて考えてもみなかったし、油断してたからね」
まさか君にしてやられるとは思わなかった、としみじみ彼女は言う。
そりゃそうだ。俺だって自分があんなことするなんて思ってなかったんだから。
「まぁ、君はすぐに顔に出るから今なら分かりそうだけど」
「……じゃあ、もし今俺がそう思ってるって分かったら、どうするんですか」
今度は珍しく雲雀さんが少し驚いた顔をした。
別に本当にそう思ってたわけじゃないけど気になった。
やっぱり避けられるんだろうか。それとも殴られるとか?
俺達が色んなステップすっ飛ばして、最初に踏んだステップをさ。
「………そのままされたりはしないよ。」
「…はは、やっぱり」
「今度は、僕がやり返す番でしょ?」
不意に額が熱くなった。
睫毛を伏せた委員長様の顔が近い。
「……これで借りは返したから。」
「ひば…」
元の位置に戻って、何事もなかったように仕事を再開してる……フリ。
上手く書類で半分くらい顔を隠しているけど、耳まで赤かったから隠しきれてない。
「~~っ、」
ちょっと何か言いたそうにこっちを見ては俯いちゃう。
「……………」
「………………」
「……何か喋ってよ…」
可愛いすぎるでしょ!
あぁ、だから雲雀さん、無意識のそういう表情がいけないんですよっ!
「文句でも言ったら?」
「えーっと……あ、じゃあ、ありがとう」
「は?」
「嬉しかったから」
「…馬鹿だね、君も」
“も”って……!
ほら、上手くいってるよな、これは。
改めて実感すると嬉しくて仕方ない。
雲雀さんから好きだとかそういう言葉はもらえないけど、確かにこの人の中に俺の存在はある。
それだけで、嬉しくて堪らないんだ。
「俺、やっぱり雲雀さん好きです」
真っ直ぐ目を合わせたら、思ったより照れてくれたらしい雲雀さんは視線を逸してしまった。
「……知ってるよ。」
毎日顔を突き合わせていたら嫌でも分かる、と呟いて。
「君と一緒にいると自分でも思いがけない事したり、調子が狂う時も多いけど、飽きないし……存外楽しんでるみたいだし」
「?」
「僕だって、少しくらいは分かるようになってるんだからね」
(僕が綱吉をどう想ってるのか。)
「…それって」
「片付けてくる。」
少し大きな声音で一言。
両手にカップを持つと、そう言い残して足早に雲雀さんは出ていった。
「…………………」
こ、殺されるっ!
何、今の!?
今まで見た事ないくらい赤くなってる雲雀さん直視しちゃった!
てかもぉ可愛すぎるっ!!
ドキドキしすぎて死ぬんじゃないかなってくらい!
このままじゃ雲雀さんに殺されるよ俺っ!!
それも本望、なんて馬鹿なことさえ思っちゃってるんだよっ!
なんて可愛いひとなんだ!
「い、今のって…つまり」
俺のこと、少しは好きになったかも…ってことだよな?
そうだよな、キスされたんだし……額にだけど。
…ていうか本当にされた…んだよな?
「……うわぁ、俺…」
今さら体温急上昇してきた。
インフルエンザでも通用しそうなくらい熱い。
「なんであの時平気だったんだ…」
あの時だって十分心臓はうるさかった。
ただきっと、俺にとっては夢みたいなことで、現実感が薄かったんだと思う。
ずっとずっと憧れてるしかなくて、毎朝会うのだけが小さな楽しみで、きっと一生縁のない人なんだろうって思ってた。
やっと少し近付いて、付き合ってるって言ってもほとんど一方的に俺の方がアタックしてるだけで。
あの漆黒の髪も瞳も陶器みたいな手も、簡単に俺の手からすり抜けちゃう。
そんな人だった。
だからこそ、ちゃんと繋いでみたくて。
「今日こそ、って決めたのにさ」
そっと額に触れてみる。
もし俺が手を繋ぎたいなんて言ったとしても雲雀さん、
あなたは逃げないって、信じても良いですか?
「何してるの?」
「うわっ!?お…お帰りなさい」
「ただいま」
いつの間にか戻ってきていた雲雀さんが不審そうな視線を向けていた。
すっかり普通の顔色をしてる。ちょっと勿体ない気がした。
「君、熱でもあるの?」
「へ?」
「赤い顔して、額押さえてるから」
しっかり見られていた恥ずかしさに慌てると、雲雀さんは小さく笑う。
完全にからかわれてるよ、俺。
「本当分かりやすいよね」
そう言ってまだ笑いながらこちらに来る。
しかしソファに座ることはなく、机に置きっ放しにしていた書類をまとめ始めた。
「あれ、お仕事終わりですか?」
「一段落ついたから、今日はここまでにしておくよ」
昼休みから働き詰めみたいだったから、さすがに疲れたのかもしれない。
大丈夫ですか、と尋ねると、平気と短く返ってきた。
「というより…あんまり君がかまって欲しそうな顔してるから、ね」
意地悪な顔で微笑む雲雀さんは、やっぱり綺麗だった。
(ていうか、あんなに見られてて仕事出来るわけないでしょ…)
「帰るよ、綱吉」
書類を元の仕事机に戻して俺の名を呼ぶ。
校内にいる間はあまり名前を呼びたがらない(ついでに呼ばせてくれない)雲雀さんの帰りたい合図でもある。
いつもはこのまま付いてくところだけど。
言うならここしかないよな。
「あのっ!」
彼女の前にずいっと手を差し出した。
あれだ、まるで付き合ってくださいって言ってる感じ。
「手!手、繋ぎたいんですけどっ!」
雲雀さんはじっとこっちを見てる。
「ダメ、ですか?」
今自分の顔を鏡で見たら、熟れたトマトみたいだったかもしれない。
おかしいな。
たまには手繋いで帰りませんか?って感じでもっとスマートにさ。
こんなに気負うつもりじゃなかったのに。
「…それは今だけ?」
「い、いやっ!出来れば……その…ずっと…なんですが」
か細い声しか出なかった。まだまだダメツナなんだなぁ、俺。
「……ふふっ」
が、なんだか雲雀さんが笑ってる。
しかも堪えきれないって感じで。
「…我慢出来ない、面白いよ君」
「そんな、これでも真剣にっ!」
「分かってる。さっきのは冗談だよ」
「な…っ!」
「いちいち赤くなったり慌てたりさ、可愛いよね、綱吉って」
そう言ってとびきりの笑顔に魅せられる。
可愛いのはあなたの方だって言いたくてたまらない!
こんな笑顔が見られるなら、毎日だって振り回されたいよ。
「良いよ。帰ろ?」
差し出した手は、小さな手にきゅっと握られる。
こんな可愛いひとが彼女だなんて、まったく俺はなんて幸せ者!
「……綱吉、また何かバカなこと考えてるでしょ」
「だってもう、俺の恋人は可愛いなぁ!と思って」
「何それ…」
すり抜けてしまうことのない温もりは、俺に芽吹きだしたばかりの愛情を教えてくれる。
雲みたいに自由なあなたを捕まえたいとは言わないけど、
一緒に飛ぶくらいは許してくれるよね?
「あぁ、そうだ」
「?」
「来年から綱吉と同じクラスだから。」
「え…えぇっ!?なんで!?」
「一緒に卒業するんだよ。」
「なッ!!」
「嫌なの?」
「そんなことあるわけないじゃないですか!でも色々…一応義務教育だし」
「それとも何、綱吉は一年間も僕を放っておいて平気なの?」
「…平気じゃないですね」
「でしょ。僕も嫌だ。」
(だって君のクラス、不安分子多すぎるよ。)
わがまま委員長様と風紀委員権限にハレルヤ!
先にノックをするのを忘れずに、応接室の扉を開いた。
一日の学生の義務とやらが終わり、ようやく訪れた放課後に高まったテンションが隠しきれず、思わず声が弾む。
中にいるであろう人を想い、一応声量は抑えたつもりだ。
「あぁ、君か」
「…雲雀さん…せっかく恋人に会ったんですから、もうちょっと嬉しそうな顔してくれても…」
書類片手にデスクワークに勤しんでいた雲雀さんはチラリと窺うようにだけこちらを見た。
そしてすぐにまた視線を紙面に戻す。
「だって昼休みも会ったじゃない」
「午後の授業があったじゃないですか!…って雲雀さんは出てないんだっけ」
「うん」
「でも俺は出てたんです!寂しかったんですよっ!」
「ふぅん」
素っ気ない。実に素っ気ない。
まぁ今に始まったことじゃないけどさ。
これでも一応、付き合ってるんだけどな。
「……不満そうな顔だね」
「…少し。」
「………まぁ、書類を見るのにも飽きてたし、気分転換にはなるかな」
でもこういう雲雀さんなりの気遣いに気付いてるから、
「お茶、飲む?」
「はいっ」
上手くいってるんだと俺は思う。
『殺されるっ』
「はぁ~、温まる~」
淹れてくれた紅茶の香りを堪能していると、なんとなく機嫌の良さそうな雲雀さんの顔が見えた。
昼休みに飲んだ紅茶とは違う香りがして少し嬉しくなる。
晴れて雲雀さんと付き合うことになって約三ヶ月。
クラスも学年も違う俺達は会う機会が少ない。
だから毎日昼休みと放課後に応接室で待ち合わせて…というか俺がお邪魔してる感じだけど。
お昼をとったり彼女の仕事を見てたり。
それが唯一の二人の時間。
「この紅茶美味しいですね!甘めだけど後味さっぱりしてて」
「前から試してみたくて取り寄せていた茶葉でね、さっき届いたんだよ」
寒くなるにつれて、雲雀さんはお手製の紅茶を振舞ってくれるようになった。温まるんだ、これが。
「あ、じゃあこれが最初に飲んだってことですか」
「…そういうことだね。」
ペンを走らせていた手を止めて、雲雀さんは頷いた。
(あ、ちょっと照れてる。)
そんなわけで、この時間は一日の疲れを癒す至福の時というヤツだ。
「雲雀さん、また昼休み終わってからずっと仕事してたんですか?」
「年末が近いからね。色々行事もあるし、風紀が乱れるから」
今度はカップを片手に書類を眺めている。
年末というか一年通して並盛で暗躍する風紀委員は相変わらず忙しそうだ。
「衣替えとか文化祭とかがあると浮き足立つ草食動物が多くて困るよ。」
「その分咬み殺せるって、こないだ嬉しそうにしてたじゃないですか」
「手間が増えるのは喜ばしくないでしょ」
そう言ってのけて、紙面にペンを走らせる。何かサインしている感じだ。
「……ねぇ、なんとなくだけど…そわそわしてない?」
「ふぇっ?!な、なんでですか?」
「だからなんとなく」
完全に目線は書類しか見てないのに、どうやって感じてるんだこの人は。
本当に肉食獣みたいじゃないか…とは思っても言わない。
「き、気のせいじゃないですかね?」
「………別に良いけど」
納得した顔じゃないよ、全然。
俺のことなんてまったく見てないような素振りなのに、こういうところは敏感すぎてよく驚かされる。
そう、雲雀さんの言った事はずばり当たっているわけで。
「君が落ち着きがないのはいつものことだしね」
「そうそう…ってそれはあんまりです!」
俺にはひとつの野望がある。
本日の応接室デートにはちゃんと目標があるんだ。
多くの世間一般の恋人達が踏むであろうステップであり、俺達が抜かしてきたステップ。
そう…今日の俺の目標は、雲雀さんと手を繋いで帰ること!
「…変な事は考えない方が良いよ。」
「っ!」
ひとまず落ち着こうと思って口に含んだ紅茶が逆にむせ返ってきた。危ない。
心の声を読まれたかのような忠告にまたしても驚いた。
「……雲雀さん、実はテレパシーとか出来たりしませんよね?」
「ワオ、本当に考えてたの?」
「ちっ、違いますよッ!」
慌てて否定した。
薄い脳みそでうっかり自白するところだった。
だってこんな目標言ったりしたら、あっさり拒否されるか笑って済まされるしかない気がする。
……悲しくなってきた。
「あくまでもしもの話で…」
「そうだね、読心術は面白いかもね」
「え?」
「また君がキスしたいとか考えてたら、それで分かるでしょ」
「!!」
大胆な発言を平気で言うもんだから、必要以上に真っ赤になってしまった。
ずるい。ずるいよ雲雀さん。
「あの時はそんなことされるなんて考えてもみなかったし、油断してたからね」
まさか君にしてやられるとは思わなかった、としみじみ彼女は言う。
そりゃそうだ。俺だって自分があんなことするなんて思ってなかったんだから。
「まぁ、君はすぐに顔に出るから今なら分かりそうだけど」
「……じゃあ、もし今俺がそう思ってるって分かったら、どうするんですか」
今度は珍しく雲雀さんが少し驚いた顔をした。
別に本当にそう思ってたわけじゃないけど気になった。
やっぱり避けられるんだろうか。それとも殴られるとか?
俺達が色んなステップすっ飛ばして、最初に踏んだステップをさ。
「………そのままされたりはしないよ。」
「…はは、やっぱり」
「今度は、僕がやり返す番でしょ?」
不意に額が熱くなった。
睫毛を伏せた委員長様の顔が近い。
「……これで借りは返したから。」
「ひば…」
元の位置に戻って、何事もなかったように仕事を再開してる……フリ。
上手く書類で半分くらい顔を隠しているけど、耳まで赤かったから隠しきれてない。
「~~っ、」
ちょっと何か言いたそうにこっちを見ては俯いちゃう。
「……………」
「………………」
「……何か喋ってよ…」
可愛いすぎるでしょ!
あぁ、だから雲雀さん、無意識のそういう表情がいけないんですよっ!
「文句でも言ったら?」
「えーっと……あ、じゃあ、ありがとう」
「は?」
「嬉しかったから」
「…馬鹿だね、君も」
“も”って……!
ほら、上手くいってるよな、これは。
改めて実感すると嬉しくて仕方ない。
雲雀さんから好きだとかそういう言葉はもらえないけど、確かにこの人の中に俺の存在はある。
それだけで、嬉しくて堪らないんだ。
「俺、やっぱり雲雀さん好きです」
真っ直ぐ目を合わせたら、思ったより照れてくれたらしい雲雀さんは視線を逸してしまった。
「……知ってるよ。」
毎日顔を突き合わせていたら嫌でも分かる、と呟いて。
「君と一緒にいると自分でも思いがけない事したり、調子が狂う時も多いけど、飽きないし……存外楽しんでるみたいだし」
「?」
「僕だって、少しくらいは分かるようになってるんだからね」
(僕が綱吉をどう想ってるのか。)
「…それって」
「片付けてくる。」
少し大きな声音で一言。
両手にカップを持つと、そう言い残して足早に雲雀さんは出ていった。
「…………………」
こ、殺されるっ!
何、今の!?
今まで見た事ないくらい赤くなってる雲雀さん直視しちゃった!
てかもぉ可愛すぎるっ!!
ドキドキしすぎて死ぬんじゃないかなってくらい!
このままじゃ雲雀さんに殺されるよ俺っ!!
それも本望、なんて馬鹿なことさえ思っちゃってるんだよっ!
なんて可愛いひとなんだ!
「い、今のって…つまり」
俺のこと、少しは好きになったかも…ってことだよな?
そうだよな、キスされたんだし……額にだけど。
…ていうか本当にされた…んだよな?
「……うわぁ、俺…」
今さら体温急上昇してきた。
インフルエンザでも通用しそうなくらい熱い。
「なんであの時平気だったんだ…」
あの時だって十分心臓はうるさかった。
ただきっと、俺にとっては夢みたいなことで、現実感が薄かったんだと思う。
ずっとずっと憧れてるしかなくて、毎朝会うのだけが小さな楽しみで、きっと一生縁のない人なんだろうって思ってた。
やっと少し近付いて、付き合ってるって言ってもほとんど一方的に俺の方がアタックしてるだけで。
あの漆黒の髪も瞳も陶器みたいな手も、簡単に俺の手からすり抜けちゃう。
そんな人だった。
だからこそ、ちゃんと繋いでみたくて。
「今日こそ、って決めたのにさ」
そっと額に触れてみる。
もし俺が手を繋ぎたいなんて言ったとしても雲雀さん、
あなたは逃げないって、信じても良いですか?
「何してるの?」
「うわっ!?お…お帰りなさい」
「ただいま」
いつの間にか戻ってきていた雲雀さんが不審そうな視線を向けていた。
すっかり普通の顔色をしてる。ちょっと勿体ない気がした。
「君、熱でもあるの?」
「へ?」
「赤い顔して、額押さえてるから」
しっかり見られていた恥ずかしさに慌てると、雲雀さんは小さく笑う。
完全にからかわれてるよ、俺。
「本当分かりやすいよね」
そう言ってまだ笑いながらこちらに来る。
しかしソファに座ることはなく、机に置きっ放しにしていた書類をまとめ始めた。
「あれ、お仕事終わりですか?」
「一段落ついたから、今日はここまでにしておくよ」
昼休みから働き詰めみたいだったから、さすがに疲れたのかもしれない。
大丈夫ですか、と尋ねると、平気と短く返ってきた。
「というより…あんまり君がかまって欲しそうな顔してるから、ね」
意地悪な顔で微笑む雲雀さんは、やっぱり綺麗だった。
(ていうか、あんなに見られてて仕事出来るわけないでしょ…)
「帰るよ、綱吉」
書類を元の仕事机に戻して俺の名を呼ぶ。
校内にいる間はあまり名前を呼びたがらない(ついでに呼ばせてくれない)雲雀さんの帰りたい合図でもある。
いつもはこのまま付いてくところだけど。
言うならここしかないよな。
「あのっ!」
彼女の前にずいっと手を差し出した。
あれだ、まるで付き合ってくださいって言ってる感じ。
「手!手、繋ぎたいんですけどっ!」
雲雀さんはじっとこっちを見てる。
「ダメ、ですか?」
今自分の顔を鏡で見たら、熟れたトマトみたいだったかもしれない。
おかしいな。
たまには手繋いで帰りませんか?って感じでもっとスマートにさ。
こんなに気負うつもりじゃなかったのに。
「…それは今だけ?」
「い、いやっ!出来れば……その…ずっと…なんですが」
か細い声しか出なかった。まだまだダメツナなんだなぁ、俺。
「……ふふっ」
が、なんだか雲雀さんが笑ってる。
しかも堪えきれないって感じで。
「…我慢出来ない、面白いよ君」
「そんな、これでも真剣にっ!」
「分かってる。さっきのは冗談だよ」
「な…っ!」
「いちいち赤くなったり慌てたりさ、可愛いよね、綱吉って」
そう言ってとびきりの笑顔に魅せられる。
可愛いのはあなたの方だって言いたくてたまらない!
こんな笑顔が見られるなら、毎日だって振り回されたいよ。
「良いよ。帰ろ?」
差し出した手は、小さな手にきゅっと握られる。
こんな可愛いひとが彼女だなんて、まったく俺はなんて幸せ者!
「……綱吉、また何かバカなこと考えてるでしょ」
「だってもう、俺の恋人は可愛いなぁ!と思って」
「何それ…」
すり抜けてしまうことのない温もりは、俺に芽吹きだしたばかりの愛情を教えてくれる。
雲みたいに自由なあなたを捕まえたいとは言わないけど、
一緒に飛ぶくらいは許してくれるよね?
「あぁ、そうだ」
「?」
「来年から綱吉と同じクラスだから。」
「え…えぇっ!?なんで!?」
「一緒に卒業するんだよ。」
「なッ!!」
「嫌なの?」
「そんなことあるわけないじゃないですか!でも色々…一応義務教育だし」
「それとも何、綱吉は一年間も僕を放っておいて平気なの?」
「…平気じゃないですね」
「でしょ。僕も嫌だ。」
(だって君のクラス、不安分子多すぎるよ。)
わがまま委員長様と風紀委員権限にハレルヤ!
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