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管理人黒峰の日々の徒然。 主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
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タイトル通り、クリスマスの特派と騎士姫のお話です。

サイトの一周年記念も兼ねていたのでその辺りの台詞も少し出てきます。
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)

シークレットリンクで短い連作だったので、それぞれの間にタイトルが入っています。

お祭り仕様なのでちょっといつもより糖度、というか密着度高めでお送りしています。笑

白くなった息が当てもなく宙を彷徨って、世界に溶け込んで消えた。
ただそれを見送って、何の気なしにスザクは特派の扉を開く。

「ただいま…」

パァ―――――ンッ……

「「「お帰りなさい!」」」

破裂音とその声に驚いたスザクの瞳に映ったのは、いつもの特派ではなく、色とりどりの世界だった。


Merry Christmas!


「…………………………………………へ?」

紙テープやら紙吹雪まみれになったスザクの目の前には、パーティ用のクラッカーを持った同僚の数人。
皆漏れなく派手な色の三角帽を頭に乗せていて、何やら楽しげに(含んだ笑顔で)笑っている。

その真ん中で、

「お帰りなさい、スザク!」

そう言って微笑むユフィが、何よりの驚きだった。

「………」
「…セシルさん、やっぱり失敗だったのでしょうか?」

固まってしまったスザクを見て、ユフィは不安そうに隣にいるセシルに聞いた。

「そんなことないと思いますよ、殿下」
「だからこっちの方が面白いって言ったのにぃ~」
「ロイドさんの案は却下したはずです。」

口を挟んできたロイドは、場の雰囲気に合わせずコンピューターの前で一人キーボードを操っていた。
その指にはピンク色のリボンがくるくると巻かれている。何に使うというのか。
しかし一向に曇らないあの顔は、何かよほど面白いデータを見つけたに違いない。

「あ、あの……」
「スザク、あんまり驚きませんでしたか?」

しゅんとした顔で尋ねるユフィに、スザクは慌てて手を振った。

「いやっ!そんなことないです!すごく驚きました!!」

何だか変な主張である。

「でもあんまりびっくりした顔してませんでしたよ…?」
「それは…その」

不満そうに聞き返すユフィの上目遣いにドギマギしながらスザクは言った。

「…その、格好は?」

そう問われ、ユフィは自分の身体を見直した。

「あぁ、サンタさんです!」

至極普通の返答が返ってきたのだが、スザクの問いたいのはそこではない。

この時期の街中でよく見かける真っ赤な衣装に帽子、白いふわふわした飾りのファー。
どこからどう見ても、もちろんそれは女の子版サンタクロースのそれで間違いは無いのだが。

「ちょっと恥ずかしいんですけど…似合いますか?」
「はい、とてもよく似合ってますよ」

良かった、とほっとしたように頬を緩めるユフィを見て、言及するのはやめておいた。

…本当は、冬だというのに短めのスカートのせいで覗いている肌が気になったのだが。

「お似合いですよ皇女殿下」
「そうです!恥ずかしがることないですよ!」

こぞって同僚達がユフィを励ました。彼女もそれにありがとうと素直に応える。

(いつの間にあんな仲良く…………やっぱりユフィには後でちょっと注意しておこう…。)
と、密かに思ったのはスザク以外にはもちろん分からない。

「それで、クリスマスパーティですか?」

特派内のあちこちは紙で出来た輪飾りや花で彩られていて、奥には豪勢な食べ物を並べたテーブルがある。

「えぇ、スザクくんを驚かせたいって今朝殿下が」
「それだけじゃないんですよ!」

得意げにユフィが言う。

「えーっと、さいとの一周年記念、なんだそうです!」
「さいと?」
「はい!だからスザクも一緒にお祝いして下さい!」

スザクの手をとって、テーブルの方へ引っ張った。

「…何だかよく分からないけど……分かりました。僕もお祝いします」
「ありがとう!」
「はい」

「「おめでとう!」」
「「「メリークリスマス!」」」

しばらく微笑ましい光景が続いていた―……。

 
 
 

Seeclet Christmas


「あーーーーーーーーっ!」

さっきまで美味しそうにクリスマスケーキを頬張っていたユフィが突然声を張り上げた。
対して隣にいたスザクはそれに驚いて、食べていたローストビーフが喉に詰まって咳き込んでしまった。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですかスザク!?」
「大丈夫です、それより…どっ、どうしたんですか急に」

背中をさすってくれるユフィに、料理に何か問題でもと尋ねる。

パッと見は三ツ星レストランのフルコース級と言っても過言ではない完璧なクリスマス料理なのだが、テーブルの端々にセシル特製の間違った日本料理が並んでいる辺り完璧に安全とは言えなかった。

味の良し悪しはともかく、とりあえず食べれない物ではないので並べるだけ並べているらしい。
というか、テーブルからはずそうなどと提案するのは誰も怖くて想像すらしたくない。

もちろんあの料理の恐ろしさを熟知している特派の面々は避けて通るのが暗黙の了解だが。

何も知らないユフィに何かあっては困ると、水面下で上手く違う料理を薦めるなどして誘導していたスザクは、だから突然の彼女の反応に驚いたのだった。
まさか見かけ洋食に和食を混ぜ込むなんて奥義は開発していまいと思っていたのだが。

「違うんです、料理はとっても美味しいですよ」

懸念した答えとは違っていて少し安心した。
確かにユフィの取り皿に残っているケーキは、普通の苺のショートケーキだった。

「では何故?」
「思い出したんです!とっても大事なことを!」

真剣な瞳がすぐ近くにあるのに今頃気付いた。
アメジスト色の瞳は本当の宝石のようにキラキラと輝いている。

「スザク!」
「は、はいっ!」
「これを!」

力強くユフィが取り出したのは、

「絶対スザクに似合うと思って用意したんです!」
「……………え」

真っ赤なお鼻の、トナカイの衣装だった。


     *


「ユフィ、こんな物をどこから…」

そう言って手にしたのは、茶色いトナカイの毛を模した着ぐるみ。

着ぐるみというよりは寝巻きっぽい素材である。
頭に被る部分にはご丁寧に丸くて赤い鼻と角が生えていた。

満面の笑みでこの衣装を差し出され、ぐいぐいと更衣室まで連れて来られたスザクは着替えの真っ最中。

あの笑顔に迫られて断れる自分はいなかったし、今までも軍の余興で女装やら何やら色々やらされてきた経験からすれば、今さら抵抗する気も起きなかった。
それに、ユフィが喜んでくれるならそこまで悪い気はしない。

「仕方ない、か」

こんなことでも、朝から自分を驚かそうと飾りつけを頑張ってくれたらしいユフィに、少しでも返せたら良い。
特に毎年姉達とパーティをするのだと言っていたのに、顔を見せてくれたことが何より嬉しかったのだ。

「これで良いのかな」

鏡を見ながら、自分に呟いた。
そこに、外からユフィの声がする。

「スザク、着替え終わりましたか?」
「あ、はい。今行きます」

更衣室を出ると、ユフィがふんわりした笑顔で出迎えてくれた。

「やっぱり!よく似合ってますよぉ」
「あ、ありがとうございます」

面と向かって言われると、やはり少し気恥ずかしかった。

「ふふ、可愛いです」
「そうですか?」
「はい。とっても可愛い、スザク…」

うっとりと瞳を細めるユフィ。
可愛いと賞賛されることに慣れていないというか、いつもと逆の立場に照れくさくなる。

「思わず…」

ギュ、と細い腕が身体に巻きついた。

「ふわふわしてますねぇ」
「え、ちょ、待ってユ…じゃなかった皇女殿下、こんなところで」
「むぅ、ユフィです」
「いや、ですからこんなところで」
「ユフィじゃなきゃ、嫌です……ユフィ、って…呼んでください」

縋りつくように抱きしめてくるユフィ。

ほんのりピンク色に染まった頬。影をつくる長い睫毛。柔らかそうな紅色の唇。
輝いていた薄紫の瞳は一転して艶めいていて、訴えるように見つめてくる。

…傍から見れば実にムードのない格好をしているのだが、そんなことは当人達にはどうでもいいことのようで。
いや、この体勢において着ぐるみであることは実に口惜しいのだが。

「……嫌、ですか?」
「嫌というわけではないんですが……その」
「スザクみたいです」
「え?」

着ぐるみの毛を撫でて、それからスザクの前髪を指先に絡める。

「大好きです」
「ユ…」
「ずぅっと…こうしていたいぐらい…」

人気の無い廊下。
少しぐらいは許されるだろうか?

真っ当な年頃らしい、クリスマスを過ごしても。

「……ユフィ」

そう思って顔を寄せる。
彼女も名を呼ばれて、無防備に見上げてきた。

「スザク………」

すると、いつもと違うユフィの香りが鼻をついた。

「が、二人います…」
「え?」

潤った唇から零れたのは、意味不明な言葉だった。
しかし、ユフィの顔は至極真面目である。

「スザクが双子だったなんて知りませんでした」
「ユフィ、何を」
「初めまして、ユーフェミア・リ・ブリタニアです」

と、ご丁寧に会釈する始末。

「お名前、を…」

そう言いながら、今度は力なく座り込んでしまった。
慌てて支えながら、スザクは上気した彼女のとろんとした顔を観察した。

「ユフィ、君はまさか…」

「スザクくーん!」

廊下の向こうからセシルが走ってくる。

「殿下が差し入れてくださったワインを見なかった…って、ご、ごめんなさい、お邪魔だったかしら?!」
「ち、違うんですセシルさん!これは」
「でも、もう少し場所は選んでくれないと…!」
「誤解です!!落ち着いてください!」
「あ、あら、違うの?でも…」

どう見てもこの状況は、と恥ずかしそうに視線を向けてくるセシルに弁解する。

「多分そのワイン、ユ、皇女殿下が飲んでしまったんだと…」
「あ、セシルさん……おはようございます」

ユフィの言葉を聞いて、ようやく彼女も納得がいったようだった。

「なるほど……殿下、お酒に弱かったんですね」

セシルもユフィに手を貸して、どうにか彼女を立たせる。

「これじゃあパーティに戻れないわね…」
「どうしましょうか」

きゅう、とユフィがスザクの服を掴んでいるのを見て、セシルは優しく笑った。

「分かったわ。スザクくん、殿下を医務室のベッドまで運んであげて?皆には言っておくから」
「はい、分かりました」

手早くスザクがユフィの腰に手を回すと、彼女の方から抱きついてきたので、その要領でいとも簡単ユフィを抱え上げる。
要するに騎士と姫らしいお姫様抱っこ。

「ふふ、しばらく二人でいても良いわよ?せっかくのクリスマスでしょう?」
「な……っ、セシルさん!?」
「医務室には近寄らないように言っておくわ。あんまりお姫様を独り占めしてると、後が怖いかもしれないけど」

そう意地悪く笑って見せたセシルは、二人を見守るように見つめてから、可愛らしくウィンクした。



その後パーティに戻ってきたスザクがどうなったかは、特派内の秘密。
 
 

 
 
After Christmas


すぅすぅと心地良さそうな寝息が聞こえる。

ほんのりと赤みのあった頬も雪色を取り戻して、どうやら少し酔いも醒めてきてくれたみたいだった。
幸い、元々飲んだのが少量だったのかもしれない。

「ん……」

葡萄酒で温まった顔を撫でてみると、まるで気を許した猫のように身じろぎするユフィ。
熟睡しているわけではなく、このまますり寄って来てもおかしくない光景だった。

しかし意識が無いのにここまで警戒心を解いてしまうのは、恋人として些かいただけない。
誰とも分からない相手にこうしているのだとすれば、普通に危険だろう。

「ユフィ」

とりあえず誰かということを意識させようと名前を呼ぶ。
まぁユフィがそれに応えるわけはなく、なんとなく口元が綻んでいるので良しとした。

「………スザ、ク」

生殺しもいいところだった。
そもそも着ぐるみのまま抱きつかれたりなんだりで、十分おあずけ気分だったのだ。
ちなみにその着ぐるみは今も着たままである。

「………」

ユフィのサンタ帽をいじる。寝辛そうだったので、ベッドに寝かせる前にあらかじめ取っておいた物だ。

寝返りをうったユフィの少し肌蹴た足元を一瞬だけ見て、自分も頭が堅いな、と感じた。

いや、直すために触れるだけなのにそれも躊躇ったので、どちらとも言えないかもしれないが。
触れたら、それだけで壊れそうなのである。今にも。

この医務室には、きっと上司の力で誰も来ないだろうことは分かっているけど。

「…ス、ザク?」
「ユフィ、目が覚めた?」

まだ開ききらない瞳が、じっとみつめてきた。

「……トナカイ、似合ってます」

小さく笑った彼女は、どうやらさっきの一連の事件は覚えていないらしい。

「酔い、醒めましたか?」
「わたし、酔ってませんよ~?」

上ずった声を聞いて、これはまだ醒めていないと取るべきだろうか、とスザクは思案した。

「気分が悪いとか…」
「わたしがサンタで、スザクがトナカイなんです」
「…そうですね」

いつもより冷たいユフィの手が頬に添えられて、ぐい、と引き寄せられる。

「聞いてますかぁ?」
「…はい、聞いてます」

ちょっとお説教くさいトーンでユフィは訊く。
基本的に酔った人間は扱いが難しいが、これはまた厄介だ。

「スザクがね、連れて行ってくれるんですよ」

スザクの生殺し気分には気付かず、嬉しそうに言葉を繋げていくユフィ。

「わたしはそこでプレゼントを配るんです」
「……それで?」
「スザクが……」

ユフィはゆっくりと身を起こした。

「スザクがわたしを運んでくれるんです。…行くべき道へ」
「…僕の導き手は、貴女ですよ?」
「そうなんです。だからわたし、サンタなんです」

いまいち話の意図が掴めない。

「それはどういう?」
「地図がないと、何処に行けば良いか分からないでしょう?」
「…はぁ」

「サンタは目的地も知っていて、プレゼントも持っているけど、一人では入る煙突にも辿り着けないんです」

気が付いたら、ユフィの目はちゃんと据わっていた。

「でもトナカイは、一人ではどこに行けば良いのか分からない。だから一緒にいるんです」
「……だから、君がサンタで僕がトナカイ?」
「はい。でも、たまに地図を落っことしちゃうドジなサンタさんもいるので、その時は一緒に迷って、探してくださいね」

進むべき道を。

「……なんだか、逆のような気もするけど」

二人でなければ、どこにも行けない未熟な二人。

言い換えるなら、二人いればどこにだって行けるということ。

「だから、一緒にいたいんです」

細かい矛盾は気にしなかった。ユフィの気持ちが、ただ嬉しかった。
突拍子も無い話だったけれど、ユフィの言葉はいつも優しく心に寄り添うから。

だから、そんなユフィがきっと、

「だって、サンタはトナカイが大好きなんです!」
「…きっと、トナカイもですよ」

愛しいんだ。

「……じゃあ、たまに寂しがり屋なトナカイもいるので、あまり一人にしないでくださいね。サンタさん」

迷っちゃいますから、そう言ってそっと口付ける。

口元から零れる甘い吐息。
酔えと誘ってくる、葡萄酒の香りを吸い込んで。

「…ついでに、トナカイからのお説教です。」


少しの独占欲を混ぜて、貴女に返す。
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