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管理人黒峰の日々の徒然。 主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
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テイトちび化連載の続きです。

部屋でテイト(小)の面倒を見始めたハクレン。
今回は二人以外は登場しません。

子どもの可愛さにちょっと絆され始めたハクレンと後半シリアス気味な二人。
ハクレンが弱音吐いててすみません…趣味でs(殴

「~♪~~♪」

朝食を逃してしまった為に、自室で簡単な物を作ろうとフライパンを手に取ると、足元でテイトが鼻歌を刻み始めた。
聞いたこともない、不思議なメロディーを歌いながらオレの後を引っ付いてくる様子は、ウキウキしている、という描写がまさにぴったりだった。
それほど期待されても、ここではあまり良い食事は作ってやれないのだが…。

「一応聞くが、何か食べられない物はあるか?」

そう言うと、テーブルの上の食材を見渡そうとして背伸びするテイト。
けれど、どうにも身長が足らないようなので、後ろから抱き上げてやる。

「!」

そうすれば目を更に輝かせて、テイトは目の前の食材を眺めた。
よっぽど腹が減ってるのか?

「み、みたことないのばっかり!」
「そうか…食べられそうか?」

部屋には菓子の材料ばかりだったが、いくらかの食材は先程フラウ司教に譲って頂いた。
(その際、またしてもテイトが隠れてしまい、ショックを受けておられたようだが。)
一応テイト(大)が普通に食べていた物ばかりなので、アレルギー等の心配はないだろう。

「なっ、なんでもおいしくたべましょう、ってファーザーが…」

と言いつつ、テイトの視線はアイフィッシュ(まだ生きている)に釘付けだ。
貴重な食材なのだが…初めて見るなら驚くかもしれない。それに苦いものは嫌いだしな。

「あの魚は使わん。他の物は?」
「…あのおはなは?」
「あれもちゃんと食べられるぞ」
「ふぅん……」

どうやら食文化がだいぶ違うようだ。まぁ、あの二つは一区でも珍しいが。
それ以上何も言わないところを見ると、食べられなくはなさそうなので、適当に甘めの物でも作ってやろう。

「ほら」

腕を降ろしてやれば、今度はテーブルの脚にしがみついてオレの方を眺めていた。
興味津々な顔を横目に、フライパンを握る。
材料をザイフォンで次々焼いていけば、それなりの食事が出来上がった。

今度は自分から手伝うと言って、テイトが皿を運びながらぱたぱた走る。
飲み物を出してやると言って席に着かせれば、今度は足を小さくぱたぱたさせた。
…うん、微笑ましいじゃないか。

「神に感謝を」

手を合わせ、遅めの朝食を始めた。
テイトはと言えば、時々物珍しそうにフォークの先を見つめて、ひとつひとつ口に含む。
たまに説明したり、食べ辛そうな物は細切れにしてやったりと、世話をしながらの食事。
教会の子ども達の世話も受験生の仕事の一環なので、特に問題なく出来たはず。

そうやって空いた皿に好き嫌いの跡はなく、とりあえず一安心だ。

「ごちそうさまでした!」

あっという間に空になった皿の前に、テイトは再び手を合わせる。

「足りなかったか?」

心なしか笑いながら、皿を見つめたままだったテイトに尋ねた。

「夕飯はもう少しまともな食事が出来るだろうから、安心しろ」
「ハクレンがつくるの!?」
「いや、シスター達だが」
「そっかぁ…」

机に乗り出しそうな程に目を輝かせ、すぐにオレの言葉に落ち込むテイト。
予想外の反応に面食らってしまった。

「なんだ?そんなに美味かったのか?」
「う、うん!」

少し意地悪な笑みを浮かべてやったのだが、テイトの言葉は照れつつも素直だった。
こっちが照れくさくなるじゃないか。

「その、シスター達は毎日大勢のために食事を作っているから、慣れていて、オレの料理よりもずっと美味い。だから……って、何を必死になっているんだオレは」
「ハクレン?」
「なんでもない」

落ち着こう。いや、断じて焦っていたわけではないが。
あいつも時々恥ずかしいことを臆面もなく口にするが、冗談で言う軽い挑発すら、こうも素直に受け入れられては、さすがに調子が狂う。

妙な空気にしてしまったので、早々に後片付けを始めることにした。

「かたづけるの?てつだう!」
「あぁ、助かる」

カチャカチャと食器の重なる音。テイトは隣で皿を拭いてくれている。

…そういえば、この姿のテイトを人目にさらすのは、あまり好ましくないのでは。
テイトを知っている人間はまず気付くだろうし、それにいちいち説明するのも面倒だ。

第一、こんな怪奇現象を受け入れてもらえるかどうか。
そうなると、人目を避けられないし、夕飯は食堂に取りに行って部屋で……。
あぁでも、コイツを一人にしておくのも心配だな…。

「………」
「…ん、どうした?」

視線を感じ、ふと横を見れば、テイトがこちらをぽかんと見上げていた。

尋ねると、慌てて皿拭きに戻るテイト。
なんでもない、と言いたいらしい。

「…これが終わったら、今日は一日この部屋でオレと勉強だ。良いな?」
「おべんきょう?」
「たくさんの人の役に立つための勉強だ。ちゃんと出来たら、休憩に菓子を作ってやらんでもない」
「!ほんと!ハクレン!」

やったぁ!とテイトははしゃいで体を弾ませる。
小さなテイトの行動は、なかなかどうして可愛らしい。

「ハクレンだいすき!」

…ラブラドール司教とカストル司教が気に入ってしまうのも、分かる気がする。

 

「ちゃんと出来たら、だぞ」
「できるもん!」
「本当か?」
「できるよ!」

菓子ごときでこんなに喜んで。
むしろこっちが、もっともっとと喜んで何かしてやりたくなるのだ。
そういうところは、テイトの天性の為せる業だと思う。

…本当は、テイトがオレのことを忘れてしまったことが、少し寂しい。

コイツもテイトなのだから、寂しいというのも変な話だが、普段なら照れて絶対言わないストレートな言葉とか、無邪気すぎる笑顔を見ると、嬉しい反面、少しだけ。
同じように素直でも、少し意地っ張りなところだとか、不器用だが優しいところとか。

そういうテイトが……オレの戦友で。

大体アイツは…、もう少し人に頼るということを覚えたらどうなんだ?
どうせ喉が渇いたくらいで起こすのは悪いとでも思ったんだろうが、水ぐらい、わざわざ部屋を出なくたって出してやるさ!少し温めにして!
第一、オレが水を出していればこんなことには…!

「…レン!ハクレン!」
「!…すまない、考え事をしていた」
「だいじょうぶ?」
「あぁ」

教典を開いたオレの膝の上に乗っている小さなテイトが、こちらを振り返っているのが眼鏡越しに見えた。

法術試験の対策は出来ないから、教典の復習でもしようと思って開いて…
…それから考え耽っていたらしい。

「どこまで読んだ?」
「うーんとね、ここ!」
「第五章か」

テイトを挟むようにして机に乗せた教典の文字を、とんと小さな指が差す。

「じゃあここから…」
「あのね!このごほん、ボクよんだことあるよ!」
「え?」

そう得意気に言ったテイトは、つらつらと教典の文をいくつか口にした。
こちらを向いたまま、教典は一度も見ずに。

「…あってる?」
「完璧だ。すごいじゃないかテイト、いつ覚えたんだ?」

個人差はあるだろうが、第七十七巻まであるこの分厚い教典を丸暗記するのはそう容易くはない。
子どもは覚えがいいと言っても、オレだって結構な時間を要したぞ?

「ファーザーのうた!」
「歌?」
「おやすみするまえに、ファーザーがうたってくれるうたとおんなじなの!」
「え…」

七十七巻、全部をか…!?

それはそれで、とてつもない悪夢を見そうだ。いや、あくまで教典なのだが…!
一種の催眠、いやいや、睡眠学習なのだろうか…。
司教を目指して日の浅いテイトが、既に筆記試験をクリア出来そうなレベルにいたのは、この膨大な量を歌詞にしていたからだとは。

「つまり…子守歌、ということか?」
「うん!」

テイトの瞳があまりにもキラキラとしているので、心配するようなものではないらしいが…。

「ファーザー、まいにちうたってくれるんだぁ…」
「…………」

うっとりと目を細めるテイト。

先程、つい寂しいなんて思ってしまったが、今のテイトだって十分寂しいのでは…?
今まで当たり前のようにしていたが、コイツにとっても訳の分からない状況で、知らない人間と部屋に押し込められて、ファーザーもいなくて。
目が覚めた時も、ファーザーを呼んでいたじゃないか。
あまりにも無邪気に笑うから、不安を見逃してしまっていただけなのかも…

「!」

テイトの曇りのない目が、オレを見ていた。

それはファーザーでも、もちろん、あの親友でもなく、ただ真っ直ぐにオレを。
幼い瞳が、オレのよく知る戦友のものと重なる。
…いや、正確には、重ねてしまったのだが…

「ハクレン」
「……テイト?」
「ハクレン…」

きゅう、と回りきらない腕が身体を捕らえた。
目覚めたばかりの時、足元にしがみついていたように。
今度は、心音を確かめるように。

「……寂しくなったのか?」

思わずストレートに言ってそっと背中を撫でると、首を横に振られた。
テイトの瞳は頑に閉じられている。

「…眠くなったか」
「…………ちょっと」
「生憎と、馴染んだ子守歌は歌ってやれないぞ」
「……ん」

相変わらず小さな腕が抱き付いてくる。
体温がじわりと滲むような、不思議な感覚。

「あのね」
「ん?なんだ?」
「さびしいの、やだ」
「?さっきは寂しくないって…」
「ハクレンがさびしいの、やだ」
「!」

気付かれていた?
不安な表情をしてしまっていたのは、オレの方だった?

「やさしいから、ハクレン、すきだから」
「テイト…」
「だから、さびしくならないで?」

……まったく。察しがよすぎて、困った奴だ。
オレとしたことが、五歳児に気遣われるとは。

「寂しくないよ」
「ハク…」
「お前がいるんだ、寂しいわけがないだろう?」
「…ほんとに……?」
「あぁ、もちろんだ」

撫でていた背をぽんぽんと叩いてやると、大きな瞳が、とろんと重たくなって。

「……ごめん、ね…」

眠りの世界に落ちてしまった。
今のが何に対する謝罪なのかは分からないが、こんなに小さくなっても、コイツは変わらないと思った。普通は逆だろうが。

「……すー…」

心配させてしまった。自分だって不安だろうに、他人のことばかり気遣って。
今だって、疲れて眠ってしまったんじゃないのか?

「いい奴すぎるのも考え物だな…」

艶やかな髪に触れると、サラサラと指の間を流れていった。
もしかすると、時折オレを見つめていたあの時、不安そうな顔をしていたのかもしれない。

……不安。
ラブラドール司教は明日になれば元に戻ると仰っていたが、それが本当かどうか確証はない。
決して司教が信用ならないわけではないが、万が一ということもある。
そうなったら意地でも解毒(?)薬を調合して頂くしかないが…

「…オレがしっかりせねば」

穏やかな顔をして眠るテイトを、起こしてしまわないようにそっと抱き上げベッドまで運んだ。
心配させてしまったお詫びに、とっておきの甘い菓子を作ってやろうと思う。

目が覚めたら、不安なことは忘れて、またあの輝いた瞳で笑ってくれるような菓子を。

それで少しでも、テイトも元気になればいい。

「…………おやすみ、テイト」

お前は困った戦友だが、ちゃんと帰りを待っててやる。

だから、今日一日くらいなら付き合ってやるから、


元に戻ったら覚悟しているといい、テイト。



後でお前の分の菓子が無くても、文句言うなよ?

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