管理人黒峰の日々の徒然。
主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
テイトちび化連載、完結です。
実は完結前のハクレンが起きたとこ辺りで放置していました…頑張ったよ…(^p^)
こんな結末で良かったのかしら?昔の私…笑
…どうにかしてもう一回「ハクレン大好き」って言わせられないか悩みました。←
それやっちゃうとね…もう友情越えそうだったんでね…自制自制。
きっとこの後部屋を出てからがテイト(大)の大惨事だと思います。ww←
実は完結前のハクレンが起きたとこ辺りで放置していました…頑張ったよ…(^p^)
こんな結末で良かったのかしら?昔の私…笑
…どうにかしてもう一回「ハクレン大好き」って言わせられないか悩みました。←
それやっちゃうとね…もう友情越えそうだったんでね…自制自制。
きっとこの後部屋を出てからがテイト(大)の大惨事だと思います。ww←
教会の朝は早い。故に、夜も早い。
「ほらテイト、まだ寝るんじゃない。これに着替えてから」
「んー…」
大きな翡翠色の瞳を、今にも重そうな瞼が隠そうとしている。
小さなテイトも必死に抵抗しているようだが、それでも襲い来る眠気にはなかなか勝てないようだった。
「着替えたらすぐベッドに運んでやるから、な?」
「……うんー」
カストル司教からお借りした子ども用の寝間着を片手に、テイトの着替えを促す。
そうすれば、どうにかゆるゆると手をあげた。
あれから目を覚ましたテイトは、用意したクッキーとマフィンの匂いに一気に覚醒したらしく、勇んでテーブルについて顔を綻ばせた。
寝顔を見ていたらついつい作り過ぎてしまったのだが、甘い物好きのテイトにとっては余裕の量だったらしく、ほどなくして皿は綺麗に空となった。
それから少ししてテイトの様子を窺いに来たフラウ司教のことも、今朝ほど警戒することはなく(司教も喜んでおられたように思う)、カストル司教とラブラドール司教が夕食を部屋まで運んでくださり、テイトを一人にすることなく無事に一日を終えられた。
これで明日には、元の戦友の姿が見られるのだろうか。
「終わっ…た…?」
「…あぁ、よく頑張った」
睡魔に打ち勝った…かどうかは微妙だが、何も言わずに、ちゃんと通っていないままの片方の袖を通してやった。
「テイト。」
今歩かせたら、きっと足元がおぼつかないであろう小さな身体を抱き上げる。
もう限界、というように腕の中でまぶたが下ろされた。
テイトの使っている方のベッドには既にミカゲが入り込んでいて、テイトが来るのを待っていた。
「ブルピャ」
「…おやすみ」
そう告げるも、聞こえていないかもしれない。
シーツを掛ける頃には、もう夢の中へと旅立っていただろうから。
自分も向かいのベッドへと身体を預ける。
一仕事終えた身体は、いい具合に柔らかい布と馴染んだ。
「どうにか終わったな…」
ラブラドール司教曰くのノルマ一日をようやく乗り切った。
適度に遊んで適度に勉強したせいか、思った以上に苦ではなかったのが救いだ。
弟が出来た感覚とはまた違うのだろうが、例えるならそれが近いかもしれない。
総合して今日一日、悪くはなかった。
「これで元の姿に戻ってくれれば……全て解決するんだが…」
「その心配はない」
「は?」
話す相手は夢の中にいるはずだが、確かにオレ以外の声がした。
慇懃な話し方に合わない、うわずった高い声。
「預魂の言う通り、明日にも我が主は元のお美しい姿に戻られるだろう」
つらつらと言葉が並べられる中、起き上がって視界を天井から室内へと戻すと、正面に身体を起こしたテイトがいた。
その小さな右手には真っ赤な石が浮き出ていて、羽のようなものが広げられている。
「まぁ、この姿の主も十分美しく愛らしいが」
「ミ、ミカエルの瞳…!?」
先程閉じられたテイトの翡翠の瞳が、緋色に輝いている。目付きも幾分鋭い。
戦友の中に眠る、伝説の瞳が覚醒した証だ。
こうして会話するのは初めてではない。
「ご苦労だったな、ハクレン=オーク」
「貴方は…私を覚えておられるのか」
「無論だ。あのくらいの薬、我には効かん」
そう自慢げに言ってのけたミカエルの瞳には失礼だが、正直見た目は幼いテイトなので、はくがつかないのは気のせいではない。
「今朝早く、お前や我が主が目覚める前に、主の着替えを済ませたのは我だ」
「え」
「少々質素な古い布ではあったが、ちょうど主の為に誂えたような大きさの服が大量に吊られているのを見掛けたのだ」
「………それはもしや教会の子ども達の洗濯物では!」
バッ、とテーブルに置きっ放しにしていたテイトの脱いだ服を見た。
「前の服では、今の主には大き過ぎた。うむ、あれは陽光の良い香りがしたぞ」
あぁ、何故オレは最初に疑問を覚えなかったんだ。
それどころじゃなかったのは勿論だが、ラブラドール司教の薬で服まで縮むはずはないのに。
もしかしたらシスター達の間でちょっとした騒ぎになったりしていたかもしれない。
……明日こっそり返しておこう。
「今日のお前の世話ぶりもしかと見届けたぞ」
仕事がひとつ増えたことに少し疲れを覚えていると、またしても得意気な声が聞こえた。
「では、何故今まで黙っておられた」
「我の意識は着替えた後すぐに途切れた。いや、無理矢理押し込められたというべきか」
「無理矢理?」
「我が主の意識が覚醒するにつれ、逆らえなかったのだ。だが、再びこうして我が表に現れることが出来たということは、元に戻る時が近いのだろう」
「テイトが寝ているから、貴方が出て来られたわけではないのですか?」
「我の意識は、主の覚醒とは関わりがない。プロ…ラブラドールの薬で主の身体に負荷がかかり、我の意識が表に出るには不安定な状態になったらしい」
「そんな、テイトの身体は平気なのですか…!?」
「無論。さほど強い薬でもない。第一、主に何かあれば我は黙ってはおらぬ」
「そうですか…」
例の副作用とやらのひとつ…ということだろうか。
しかし若返りの効果は及ばなかったとはいえ、伝説の瞳を押さえ込むほどの薬…
失敗からの偶然とはいえ、ラブラドール司教、やはり手強い。
「しかしさすが我が主の大切な友人、なかなか主の嗜好を押さえていたぞ。さぞお喜びの様子だった。礼を言う」
「いえ、大したことはしていません。テイトは私の友人ですから、当然です」
実際こちらが助けられたこともあったし、良い世話係だったとは言えないだろう。
とてもこいつのファーザーの代わりが務まったとは思えない。
「うむ、良い心掛けだ。だが他の司教達でなくお前が世話役になって良かったと思うぞ」
「…というと?」
「お前の髪」
「髪?」
ミカエルの瞳の言葉に、肩から流れている髪を見た。
「我が主の神父の髪も、陽に透けるそんな色をしていた」
「…あいつの…ファーザーも…」
「主がお目覚めになった時、間違えてお前を神父と呼んだのもそのため。その後も何度か触れようとされていた。実に可愛らしかったぞ」
触れようとしていた?テイトが、オレの髪に?
「何度かお前を見ていただろう」
「あ……」
あれは、そういうことだったのか?
オレの内心が見透かされていたわけではなく、ただこの色に神父を想って。
「そう、でしたか」
「元々人懐っこい方だが、初対面であれほど安心されているのは我も初めて見た」
昼寝の前にテイトが言った「ごめんね」の意味は、もしかしたらそういうことだったのだろうか。
オレはテイトに戦友を重ね、テイトはオレに神父を重ねていた。
通じ合っていたようで、そうではなかったから。
それでいて、きっとテイトはオレのことにも気付いていた。だから寂しいのは嫌だなんて。
「……お人好しなのはこの頃からですか」
「主は慈悲深い、そういう御方だ」
テイトの姿でテイトを褒める様は些か不思議な感覚だが、目の前の伝説は、自分の主を至極敬愛しているようだった。
「…さて、伝えることは全て伝えた」
「え?」
「これ以上主のご就寝を妨げるわけにはいかない」
「あ、あの!」
緋色の瞳は今にも閉じられようとしている。
「……ありがとうございました」
幼い顔は年不相応に笑う。
「報酬は明日、とびきり美味い菓子で良いぞ」
「…えぇ。必ず」
口許に満足そうに弧を描くと、塞がれた緋色が翡翠を覗かせることはなかった。
そのまま枕へ倒れようとしていたのを急いで支えてやる。
「まったく…」
今日一日テイトの傍にいて、コイツが自然と人から愛される素質を持っていることを実感した。
司教様達は度々様子を伺いに来られたし、頼む間もなくあれこれ世話してくださった。
明日テイトが顔を見せれば、きっと受験仲間が輪をつくる。
まさか、ミカエルの瞳まで虜にしてしまうとは驚きだが…
「…オレだって、傍にいるんだぞ」
それなのに、目の前のテイトはこんなに穏やかな寝顔をしているのに、何故あいつはあんなに苦しそうに夜を迎える?
涙の理由を、苦しみをどうしてお前と分け合えない?誰も拭ってやれない?
たとえオレでは役不足だとしても…お前を支えてくれる人は、すぐ周りに大勢いる。
そのことに早く気付いてくれ、テイト――――……
「……レン…ハクレン!」
「………ん…」
聞き慣れた、戦友の呼ぶ声がする。
幻聴だろうか?だって今のテイトの声はもっと幼くて。
あぁそれともまた、オレの願望…?
「ハクレン!」
「!」
「大丈夫か!?生きてる?!」
起き上がろうとして、その前にペタペタペタペタと顔に身体にあちこち温かい手が触れてきた。
「ちょ、テイ、」
「…良かった!怪我はないみたいだなっ」
「…いいから落ち着け。」
勝手に一安心している様子の戦友をどうにか制す。
あぁ、いつもの、オレの知っているテイトが、目の前にいるんだ。
「目が覚めたらお前が横にいて、呼んでも全然起きないし…心配したんだぞ!」
「そうか……悪かったな」
どうやらあのまま眠ってしまったらしく、テイトのベッド脇に突っ伏したまま夜を明かしたようだ。
「本当に大丈夫か?何かあったのか?」
「お前…何も覚えてないのか?」
「?何のことだ?」
呆れた。拍子抜けだ。
昨日一日オレがどれだけ大変な目に遭ったと思ってるんだ。
それであれだけ心配かけさせたというのに、なんで人の心配なんてしてるんだこいつは。
パチンッ
「ッ!?いってーな!何すんだよ急に!」
つい苛立って、額にデコピンを食らわせてしまった。
テイトは突然の攻撃に抗議しながら額を両手で押さえる。
「お前は……、本ッッ当に困った奴だ」
「はぁ??」
「テイト」
「なんだよ」
「…テイト。」
真っ直ぐに見つめて、ただ目の前の戦友の名を呼ぶと、その頬が少し赤らむ。
昨日よりも伸びた背、昨日よりも大人びた顔つき、昨日よりも低い声。
「テイト」
あぁ、これが。
「…ハクレン」
オレの大切な、戦友―テイト―だ。
まだまだオレの知らないお前がいることは知ってる。いつか知りたいと思う。
だが、勝手にオレを知らないお前にならないでくれ。
オレを一人にするな。絶対、お前を一人にはしないから。
「お前は一人じゃない、テイト」
「ハクレン……」
「オレも、ミカゲも、フラウ司教、カストル司教、ラブラドール司教、シスター達、受験生の仲間…お前はたくさんの人に見守られ、オレ達はいつもお前の傍にいる」
「ブルピャ!」
テイトのベッドで眠っていたミカゲが同意してくれるように肩に飛び乗った。
「そのことを、忘れないでくれ」
「ブルピャ!」
「二人とも……」
ひどく驚いたような、切なそうな顔をするテイトに笑いかけると、ミカゲもテイトの方へ飛び移る。
「き、急にそんなこと言われたら…っ」
「…なんだ?感動して涙が止まらないか?」
「ばっ!?誰が泣くかぁッ!」
顔をごしごしと擦りながら、テイトは焦って否定する。
…やっぱり、素直すぎるお前は調子が狂うよな。
「何があったんだよ本当に…」
「それは司教達にでも訊いてくれ」
「フラウ達に…?」
不思議そうな顔をするテイトをよそに立ち上がり、昨夜の約束を果たしに行く。
……その前に。
「あぁ、それとテイト、」
「ん?」
「おかえり」
(お前の好きなマフィン焼いてやるから、その間に、この服をそっと返してこい)
(え、なんで教会の子ども服…?)
「ほらテイト、まだ寝るんじゃない。これに着替えてから」
「んー…」
大きな翡翠色の瞳を、今にも重そうな瞼が隠そうとしている。
小さなテイトも必死に抵抗しているようだが、それでも襲い来る眠気にはなかなか勝てないようだった。
「着替えたらすぐベッドに運んでやるから、な?」
「……うんー」
カストル司教からお借りした子ども用の寝間着を片手に、テイトの着替えを促す。
そうすれば、どうにかゆるゆると手をあげた。
あれから目を覚ましたテイトは、用意したクッキーとマフィンの匂いに一気に覚醒したらしく、勇んでテーブルについて顔を綻ばせた。
寝顔を見ていたらついつい作り過ぎてしまったのだが、甘い物好きのテイトにとっては余裕の量だったらしく、ほどなくして皿は綺麗に空となった。
それから少ししてテイトの様子を窺いに来たフラウ司教のことも、今朝ほど警戒することはなく(司教も喜んでおられたように思う)、カストル司教とラブラドール司教が夕食を部屋まで運んでくださり、テイトを一人にすることなく無事に一日を終えられた。
これで明日には、元の戦友の姿が見られるのだろうか。
「終わっ…た…?」
「…あぁ、よく頑張った」
睡魔に打ち勝った…かどうかは微妙だが、何も言わずに、ちゃんと通っていないままの片方の袖を通してやった。
「テイト。」
今歩かせたら、きっと足元がおぼつかないであろう小さな身体を抱き上げる。
もう限界、というように腕の中でまぶたが下ろされた。
テイトの使っている方のベッドには既にミカゲが入り込んでいて、テイトが来るのを待っていた。
「ブルピャ」
「…おやすみ」
そう告げるも、聞こえていないかもしれない。
シーツを掛ける頃には、もう夢の中へと旅立っていただろうから。
自分も向かいのベッドへと身体を預ける。
一仕事終えた身体は、いい具合に柔らかい布と馴染んだ。
「どうにか終わったな…」
ラブラドール司教曰くのノルマ一日をようやく乗り切った。
適度に遊んで適度に勉強したせいか、思った以上に苦ではなかったのが救いだ。
弟が出来た感覚とはまた違うのだろうが、例えるならそれが近いかもしれない。
総合して今日一日、悪くはなかった。
「これで元の姿に戻ってくれれば……全て解決するんだが…」
「その心配はない」
「は?」
話す相手は夢の中にいるはずだが、確かにオレ以外の声がした。
慇懃な話し方に合わない、うわずった高い声。
「預魂の言う通り、明日にも我が主は元のお美しい姿に戻られるだろう」
つらつらと言葉が並べられる中、起き上がって視界を天井から室内へと戻すと、正面に身体を起こしたテイトがいた。
その小さな右手には真っ赤な石が浮き出ていて、羽のようなものが広げられている。
「まぁ、この姿の主も十分美しく愛らしいが」
「ミ、ミカエルの瞳…!?」
先程閉じられたテイトの翡翠の瞳が、緋色に輝いている。目付きも幾分鋭い。
戦友の中に眠る、伝説の瞳が覚醒した証だ。
こうして会話するのは初めてではない。
「ご苦労だったな、ハクレン=オーク」
「貴方は…私を覚えておられるのか」
「無論だ。あのくらいの薬、我には効かん」
そう自慢げに言ってのけたミカエルの瞳には失礼だが、正直見た目は幼いテイトなので、はくがつかないのは気のせいではない。
「今朝早く、お前や我が主が目覚める前に、主の着替えを済ませたのは我だ」
「え」
「少々質素な古い布ではあったが、ちょうど主の為に誂えたような大きさの服が大量に吊られているのを見掛けたのだ」
「………それはもしや教会の子ども達の洗濯物では!」
バッ、とテーブルに置きっ放しにしていたテイトの脱いだ服を見た。
「前の服では、今の主には大き過ぎた。うむ、あれは陽光の良い香りがしたぞ」
あぁ、何故オレは最初に疑問を覚えなかったんだ。
それどころじゃなかったのは勿論だが、ラブラドール司教の薬で服まで縮むはずはないのに。
もしかしたらシスター達の間でちょっとした騒ぎになったりしていたかもしれない。
……明日こっそり返しておこう。
「今日のお前の世話ぶりもしかと見届けたぞ」
仕事がひとつ増えたことに少し疲れを覚えていると、またしても得意気な声が聞こえた。
「では、何故今まで黙っておられた」
「我の意識は着替えた後すぐに途切れた。いや、無理矢理押し込められたというべきか」
「無理矢理?」
「我が主の意識が覚醒するにつれ、逆らえなかったのだ。だが、再びこうして我が表に現れることが出来たということは、元に戻る時が近いのだろう」
「テイトが寝ているから、貴方が出て来られたわけではないのですか?」
「我の意識は、主の覚醒とは関わりがない。プロ…ラブラドールの薬で主の身体に負荷がかかり、我の意識が表に出るには不安定な状態になったらしい」
「そんな、テイトの身体は平気なのですか…!?」
「無論。さほど強い薬でもない。第一、主に何かあれば我は黙ってはおらぬ」
「そうですか…」
例の副作用とやらのひとつ…ということだろうか。
しかし若返りの効果は及ばなかったとはいえ、伝説の瞳を押さえ込むほどの薬…
失敗からの偶然とはいえ、ラブラドール司教、やはり手強い。
「しかしさすが我が主の大切な友人、なかなか主の嗜好を押さえていたぞ。さぞお喜びの様子だった。礼を言う」
「いえ、大したことはしていません。テイトは私の友人ですから、当然です」
実際こちらが助けられたこともあったし、良い世話係だったとは言えないだろう。
とてもこいつのファーザーの代わりが務まったとは思えない。
「うむ、良い心掛けだ。だが他の司教達でなくお前が世話役になって良かったと思うぞ」
「…というと?」
「お前の髪」
「髪?」
ミカエルの瞳の言葉に、肩から流れている髪を見た。
「我が主の神父の髪も、陽に透けるそんな色をしていた」
「…あいつの…ファーザーも…」
「主がお目覚めになった時、間違えてお前を神父と呼んだのもそのため。その後も何度か触れようとされていた。実に可愛らしかったぞ」
触れようとしていた?テイトが、オレの髪に?
「何度かお前を見ていただろう」
「あ……」
あれは、そういうことだったのか?
オレの内心が見透かされていたわけではなく、ただこの色に神父を想って。
「そう、でしたか」
「元々人懐っこい方だが、初対面であれほど安心されているのは我も初めて見た」
昼寝の前にテイトが言った「ごめんね」の意味は、もしかしたらそういうことだったのだろうか。
オレはテイトに戦友を重ね、テイトはオレに神父を重ねていた。
通じ合っていたようで、そうではなかったから。
それでいて、きっとテイトはオレのことにも気付いていた。だから寂しいのは嫌だなんて。
「……お人好しなのはこの頃からですか」
「主は慈悲深い、そういう御方だ」
テイトの姿でテイトを褒める様は些か不思議な感覚だが、目の前の伝説は、自分の主を至極敬愛しているようだった。
「…さて、伝えることは全て伝えた」
「え?」
「これ以上主のご就寝を妨げるわけにはいかない」
「あ、あの!」
緋色の瞳は今にも閉じられようとしている。
「……ありがとうございました」
幼い顔は年不相応に笑う。
「報酬は明日、とびきり美味い菓子で良いぞ」
「…えぇ。必ず」
口許に満足そうに弧を描くと、塞がれた緋色が翡翠を覗かせることはなかった。
そのまま枕へ倒れようとしていたのを急いで支えてやる。
「まったく…」
今日一日テイトの傍にいて、コイツが自然と人から愛される素質を持っていることを実感した。
司教様達は度々様子を伺いに来られたし、頼む間もなくあれこれ世話してくださった。
明日テイトが顔を見せれば、きっと受験仲間が輪をつくる。
まさか、ミカエルの瞳まで虜にしてしまうとは驚きだが…
「…オレだって、傍にいるんだぞ」
それなのに、目の前のテイトはこんなに穏やかな寝顔をしているのに、何故あいつはあんなに苦しそうに夜を迎える?
涙の理由を、苦しみをどうしてお前と分け合えない?誰も拭ってやれない?
たとえオレでは役不足だとしても…お前を支えてくれる人は、すぐ周りに大勢いる。
そのことに早く気付いてくれ、テイト――――……
「……レン…ハクレン!」
「………ん…」
聞き慣れた、戦友の呼ぶ声がする。
幻聴だろうか?だって今のテイトの声はもっと幼くて。
あぁそれともまた、オレの願望…?
「ハクレン!」
「!」
「大丈夫か!?生きてる?!」
起き上がろうとして、その前にペタペタペタペタと顔に身体にあちこち温かい手が触れてきた。
「ちょ、テイ、」
「…良かった!怪我はないみたいだなっ」
「…いいから落ち着け。」
勝手に一安心している様子の戦友をどうにか制す。
あぁ、いつもの、オレの知っているテイトが、目の前にいるんだ。
「目が覚めたらお前が横にいて、呼んでも全然起きないし…心配したんだぞ!」
「そうか……悪かったな」
どうやらあのまま眠ってしまったらしく、テイトのベッド脇に突っ伏したまま夜を明かしたようだ。
「本当に大丈夫か?何かあったのか?」
「お前…何も覚えてないのか?」
「?何のことだ?」
呆れた。拍子抜けだ。
昨日一日オレがどれだけ大変な目に遭ったと思ってるんだ。
それであれだけ心配かけさせたというのに、なんで人の心配なんてしてるんだこいつは。
パチンッ
「ッ!?いってーな!何すんだよ急に!」
つい苛立って、額にデコピンを食らわせてしまった。
テイトは突然の攻撃に抗議しながら額を両手で押さえる。
「お前は……、本ッッ当に困った奴だ」
「はぁ??」
「テイト」
「なんだよ」
「…テイト。」
真っ直ぐに見つめて、ただ目の前の戦友の名を呼ぶと、その頬が少し赤らむ。
昨日よりも伸びた背、昨日よりも大人びた顔つき、昨日よりも低い声。
「テイト」
あぁ、これが。
「…ハクレン」
オレの大切な、戦友―テイト―だ。
まだまだオレの知らないお前がいることは知ってる。いつか知りたいと思う。
だが、勝手にオレを知らないお前にならないでくれ。
オレを一人にするな。絶対、お前を一人にはしないから。
「お前は一人じゃない、テイト」
「ハクレン……」
「オレも、ミカゲも、フラウ司教、カストル司教、ラブラドール司教、シスター達、受験生の仲間…お前はたくさんの人に見守られ、オレ達はいつもお前の傍にいる」
「ブルピャ!」
テイトのベッドで眠っていたミカゲが同意してくれるように肩に飛び乗った。
「そのことを、忘れないでくれ」
「ブルピャ!」
「二人とも……」
ひどく驚いたような、切なそうな顔をするテイトに笑いかけると、ミカゲもテイトの方へ飛び移る。
「き、急にそんなこと言われたら…っ」
「…なんだ?感動して涙が止まらないか?」
「ばっ!?誰が泣くかぁッ!」
顔をごしごしと擦りながら、テイトは焦って否定する。
…やっぱり、素直すぎるお前は調子が狂うよな。
「何があったんだよ本当に…」
「それは司教達にでも訊いてくれ」
「フラウ達に…?」
不思議そうな顔をするテイトをよそに立ち上がり、昨夜の約束を果たしに行く。
……その前に。
「あぁ、それとテイト、」
「ん?」
「おかえり」
(お前の好きなマフィン焼いてやるから、その間に、この服をそっと返してこい)
(え、なんで教会の子ども服…?)
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