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管理人黒峰の日々の徒然。 主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
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つなひば♀続編です。

【注意事項おさらい】
・以前別館で掲載していたリボーンのつなひば(※逆にもなります)小説です。
・ツナさんの方が年上です。委員長は後輩です。
・雲雀さんの性別がおにゃのこです。女子です。

二人の出会い編ですよー。
この回はツンデレデレなツナ→ヒバです。お付き合いはしてません。

タイトルはお題として空飛ぶ青い何か。様よりお借りしています。


貴女に出会ったのはそう、丁度一ヶ月前のこと―……


昨日までは腹の底から恐ろしかったあの言葉が、俺を救い出してくれたんだ。




『咬み殺すよ。』




陽の当たらない、薄暗い校舎裏。

枯れ葉もそのまま、湿けた匂いに雑草も生え放題で、誰も手入れしていないことが俺でも分かる。

つまり、普段人が寄付かない場所だ。


もちろん俺だって、こんな場所来たくもなかったよ。



「聞いてんのか沢田ぁ!」

「…っ!」



ダンッと男の拳が校舎の壁を鳴らす。

たまらなく怖くて、俺はきゅっと目を閉じた。


相手は三人。

一人は壁際に追いやった俺を両の手で挟んで拘束する、ブリーチ全開金色長髪の目付きの悪い男。

残りの二人は見張り役を兼ねた所謂取り巻き。

二人共どこがどうという特徴もない、目立たない感じの容姿だった。

…まぁ、明らかに真っ当な学生には見えないけれど。


ふとそんなことを思っている隙に、とても格好良いなんて形容出来ない厳めしい顔が俺に迫った。



「今の日本は景気が悪くていけないよなぁ?」

「ひ…っ」



そんなの俺に関係ないじゃんか。

なんて、もっと俺が強かったら言えていただろうか。

今日は金目当てか。半ば諦めたような気持ちで内心呟いた。


どうして俺はこうも都合良く名前も分からないような人達に絡まれるんだろう。



今日は遅刻しなかったのに―……




自分で言うのもアレだけど、俺は正直落ちこぼれだ。しかも救いようがないほどの。

どれぐらいかって、あだ名が「ダメツナ」な時点で察して欲しい。


勉強は出来ないし、運動も鈍くてとろくて問題外。

これといって顔も良くないし、むしろ生まれつき色素の薄い髪のせいで余計なトラブルを招きまくる始末。

俺は一度だって彼らのブリーチで傷んだ髪を羨ましいなんて思った事ないのに。


そんな毎日のおかげで、性格だって臆病で弱虫。

衝突するぐらいなら人に譲る方がずっと楽で安全だ。


しかし何の因果だろう。



そんな風に考えてしまう情けないダメツナな俺とは正に対極にある少女が同じ中学に存在する。



並盛中風紀委員長、雲雀恭弥。


並中、いや並盛の町全体をも支配する規律、風紀委員を統べる一人の女の子。

規律を乱す者には容赦なく愛用のトンファーを振い、徒党を組んで治安を乱す不良の存在を決して許さない。

人に譲るくらいなら、片っ端から相手を潰して己を通す。

それが彼女のスタンス。

いっそ清々しいほどの支配者だ。


懐に潜むあの金属には、乾いた血がこびり付き、鉄っぽい嫌な臭いが漂っている。

気絶寸前、若しくは本当に気絶まで追い込まれた獲物達の一片だろう。

それ故、彼女には誰も逆らえない。

自分以外がこの町を跋扈するのを良しとしない、確固たる信念の元に生きている。



まるで絶対君主のような彼女は、もちろん俺にとっても恐ろしい相手だ。


朝起きられない自分としては、毎朝の遅刻の取り締まりはとても恐い。

学ラン(並中の制服ではない)に身を包んだ、昔懐かしい暴走族風のリーゼントが毎朝校門で出迎えてくれる。

本鈴を過ぎてそこを通ろうものならば、罰諸々に対するそれ相応の覚悟が必要になる。

何回か心臓が潰れそうな危機感と共に校門をくぐろうとしたけれど、他の委員ならまだしも運悪く雲雀本人に捕まってしまった日は血祭りも覚悟したものだ。(なんとか生還出来た時は思わず感動した)



この茶色い髪に色々と注意を促されたりもした。

最初は不良よろしく染めているものだと思われて、



「そこの君、校則違反なんだけど」



春風(の運んでくる眠気)に誘われて屋上でサボっていたところにハスキーボイスに声を掛けられた。

ちなみにこれが彼女、雲雀恭弥に初めて俺個人として話しかけられた言葉である。


…始めは屋上でサボっていた事に関して注意されたのかと思ったけれど、冷静に考えれば彼女も貯水タンクの上で風と遊んでいたのでそれはあまりに理不尽だろう。



「咬み殺そうか?」



鋭い眼光と共に言い放たれたその言葉に確かに寒気を覚えて、俺はうろたえた。


少し冷たい風に靡いていた、黒曜石のような密かに、けれど鋭い光を纏った髪をよく覚えている。

流石に悠長に見惚れている時間はなかったけれど(生命の危険を察知した)驚くほど白い肌に埋め込まれた宝石の様な闇色の瞳や薄紅色に色付いた唇は、確かに整っていて繊細な造りだったのである。



「…つまり君のその髪は天然だって言うんだ?」

「はいっ!俺っ、絶対染めたりなんかしてませんっ!!」



貯水タンクからトンファーを構えて降り立った彼女に、俺は必死に訴えた。

ついでに遅刻常習犯であることもバレて、尋問の様な会話の後にやっとのことで事情を理解してもらえそうだった。



「誓ってもいいです、俺っ!」

「ふぅん?」

「だって…だって、雲雀さんみたいな黒い髪の方が綺麗だなって思……う…んです…から?」



何を言ってるんだ俺は!?


夢中で弁解している間に出てきた言葉。

自分でも分からなくなって、こんなこと言ったら殺される、そう思って死を覚悟した。


…けれど。



「………本来なら、容赦しないんだけど」

「へっ?」

「…何間抜けな顔してるの。」



彼女の声があまりにも小さかったので聞き返すと、怒った様な、呆れた様な顔をしてトンファーを下ろした。



「沢田とか言ったっけ」

「はい?」

「今だけ見逃してあげる。気が変わらないうちに授業に戻るんだね。」

「………」

「聞こえなかったの?」

「はっ、はい!ありがとうございます!」



俺はただ言われたまま、全力で授業中の教室へ向かった。

意外な言葉だった。どうして急に気が変わったのだろう。


だけどその時の俺には恐怖の方が大きくて、考える余地なんてなかった。



並盛中最強の風紀委員長・雲雀恭弥。



まさか彼女が、いや、彼女にも―………



「何よそ見してんだよ沢田!」

「ぐっ!?」



がさついた声と背中を走ったコンクリートの痛みに、急に現実に引き戻された。



「いい度胸じゃねぇか」



掴まれた肩は食い込む様な指に押さえ付けられる。



「痛ぅ…ッ」



肩の痛みに反応して、じわりと涙が出そうになるのを必死に堪えた。

ここで泣いたら更に相手の思うツボだ。



「どうした?悔しいなら反撃してみたらどうだダメツナ!」

「や、やめ……っ!」



品定めするように相手の顔が迫る。

“ダメツナ”

そう呼ばれて、また涙腺が緩んだ。


情けない。弱い。脆い。


反撃なんて夢のまた夢。叫ぶことすら出来ない。

視界を遮って、俺は目の前の現実から逃げることしか出来なかった。


その真っ黒な闇の中に、更に漆黒の影を思い描く。

こんな時、意味がないと分かっていて、俺はあの人を思い出す。

すごく怖くて苦手だけど、俺とは正反対だけど。

正反対だからこそ、ほんの少しだけ、こっそりと憧れているあの人。


こんな時、あの人なら―……!



「咬み殺す!」


「ふぇ?」



不意に、同年代にしてみれば少しハスキーな低音が不良グループの後ろに落ちてきた。

そう、まさしく落ちてきたのだ。


そして聞き慣れない、というかあまり聞きたくはない音が耳を打ち付けて、やがて何の音もしなくなった。

きつく閉じていた目をゆるゆると開けてみると、そこにはさっきまでの現実はない。


真っ黒な影が、ひとつ。



「あ………」

「草食動物がこんな所で群れて……目障りだね」



鈍く光る金属から、真っ赤な血が滴った。

思わず一歩後退ろうとして、壁に押しつけられていたのを思い出す。



「ひ、ひ…ヒバリ…さん…?」



本物の?


俺の描いた現実逃避の続きなのではと数回目を擦ったが、彼女の存在は闇に消えたりはしなかった。



「なんで」

「なんだ、まだ居たの」



ようやく声を発した俺を一瞥して彼女は言い放った。

けれどあまりに酷いような物言いも、彼女の足元に転がる凄惨な光景に比べたらまだマシに思えてしまった。



「まったく、弱い者が群れて風紀を乱していないか校舎を見回っていたら、まさか窓の外に見つけるなんてね」



落ちてきた声の正体。

どうやら俺の背に在る壁の二階、あの開いている窓から俺達を見つけて飛び降りたらしい。無茶をするものだ。


俺が目を瞑った数瞬の間に聞こえた鈍い衝突音と助けを求める嘆願、短い悲鳴が耳の奥で甦る。



「さっさと逃げ出したと思ったよ。脆弱な草食動物達の中でも一際か弱い草食動物……」



すっかり伸びている不良達をつまらなさそうに見やった後、鋭い眼光はこちらに向けられる。

まるで獲物を見つけて歓喜する獣の瞳。


この人の瞳は、どうしてこんなに怖いんだろう。



「それとも、そんなに咬み殺されたいの?」



この人のまなざしは、どうしてこんなに真っ直ぐなんだろう?



「………今日は逃げないんだね」

「え?あ……えっと」



考えていたせいで、俺は答えることも逃げることもしていなかった。

それをどう思ったのか、彼女は珍しく面白いものを見たような表情をみせた。



「草食動物なんて群れてるか大人しく食われるか、叫ぶぐらいしか出来ない」

「?」

「その草食動物にすら襲われるなんて、君は何者なの?」

「う゛……」



言わんとするところは分からないが、褒められているわけじゃない事だけはよく分かった。



「まぁ君が何であろうと、弱い者に興味はないよ」

「あ、あのっ!」



言葉通り興味をなくしたようにその場を立ち去ろうとしていた彼女を、俺は咄嗟に引き止めた。



「……まだ何か用?」



不機嫌そうにこちらを窺う雲雀。

群れるのは嫌いなんだ、と目が訴えている。


その瞳に向かって心の中で呟いた。怯むな、と。



「あ、あのっ………助けてくれて、ありがとうございました!」



がばっと勢いよく頭を下げる。

するとしばらく訪れる沈黙。



「………何を言っているのか分からないな」

「えっ?」

「僕はただ、群れて風紀を乱す草食動物を始末しただけだよ。」



雲雀は淡々とそう答えた。

まぁ殺してはないけど、と付け加えて。



「…………で、でも」



けれど俺は、彼女がこの場に介入しなければきっといつもと同じ酷いめにあっていたんだ。

ここまで懲らしめられるのは流石に少し可哀相にも思えたけど、やっぱり俺はお礼が言いたい。



「それでも……そのおかげで俺は結果的に助かったんです。だからありがとうございます!」

「…………やっぱり、君は何なんだろうね」



今度は彼女の瞳を真っ直ぐ見て言う。

すると剣呑な表情をしていた彼女の口元が少しだけ緩んだ気がした。

未知のものを見つけた、好奇の目。


しかしまるで錯覚だとでも言うように、すぐに元の委員長様の顔に戻ってしまった。



「礼なんていらない。助けたつもりないから。」

「でも俺、無事ですよね?」



いつもの雲雀であれば、たとえそれがカツアゲの現場だろうと、とにかく気に障った相手は善悪関わらず倒しているはずである。


それが今、何故奇跡的にも無傷な自分がいるのか。


弱いから眼中にないだけ……なのかもしれないけどさ。

……想像するしかないけど。



「…だから?」

「俺が言いたいだけです。だから、ありがとうございました。ヒバリさん」



真っ直ぐに彼女を見て言うと、自然と顔が綻んだ。

すると彼女はくるりと向こうを向いてしまった。

そして一言。



「咬み殺すよ。」



短く、けれど意外なほど穏やかに紡がれた言葉。


(う、うわ…なんて言うか……ヒバリさん、)


それがうっかり照れ隠しのように見えてしまったのは、きっと俺だけじゃないはず。

……まぁ、俺以外なんて誰も見ていないけど。


そして、そんな彼女をうっかり可愛いと思ってしまった自分がいるのも、どうやら気のせいじゃないらしい。



「……何て顔してるの。」



知らずに口許が緩んでいたらしい。

不快に思ったのか、彼女はこちらを睨んでいる。

だけどその双眸に先程までの剣呑な空気は感じられない。


毎朝怯えていた最凶の風紀委員長様。

そんな彼女とこんな穏やかな空気で言葉を交わしていることがなんだかとても不思議に思えて、俺はくすくすと込み上げてくる笑いが押さえきれなかった。



「…分かりました。ただの気まぐれってことにしておきます」

「君………本当に咬み殺すよ」



俺と全く正反対の、俺の憧れの人。


あぁ、本当は彼女の何処かにも“優しさ”があるのかもしれないなんて思っちゃってる。

そんなこと言ったら、せっかく助かったのが無駄になりそうだから言わないけど。



「“君”じゃないですよ。沢田綱吉、これが俺の名前です」

「知らない。覚える気もない」

「ちなみに一学年上です」

「聞いてないよ」



あなたの知らなかった部分をちょっぴり知ってしまった気がして。



「そんなこと言わないでくださいよ、“雲雀さん”!」

「…ついてこないでくれる?」



皆の知ってる“ヒバリさん”よりも貴女に近付けた気がして、



俺はとても嬉しいんだ。
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