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管理人黒峰の日々の徒然。 主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
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つなひば♀続編です。

【注意事項おさらい】
・以前別館で掲載していたリボーンのつなひば(※逆にもなります)小説です。
・ツナさんの方が年上です。委員長は後輩です。
・雲雀さんの性別がおにゃのこです。女子です。

草壁さん登場。黒耀編後になります。
この回はシリアスデレなツナヒバツナです。お付き合いはしてません。

タイトルはお題として空飛ぶ青い何か。様よりお借りしています。

ここ半月ほど、あの人の顔を見ていない。


風紀委員との接触は最大限避けてきた。

一回も遅刻をしなくなって、先生にかえって心配されたほどだ。


カツアゲなんかに巻き込まれそうになった時もとにかく全力で逃げた。

死ぬ気になればなんでも出来る。これはリボーンのおかげ。



心のどこかで、俺のことを思い出してくれる時は一瞬でもあるだろうか、まだあの人の中に俺はいるだろうか、なんて女々しいことを思いながら過ごす半月は短くなかった。


もう忘れてしまった頃だろうか。


本当はそう期待しなきゃいけないんだけどさ。


(それでも、俺は……)



そんな馬鹿なことを思っていたから、

あんなことになってしまったんだろうか……―――





『ひ、雲雀さん落ち着いて。』





「委員長、お加減は?」

「平気。」



扉の隙間から窺う草壁に素っ気なく答えると、ガラリと引き戸を引いて入って来た。


ここは並盛でも風紀委員が特に贔屓にしている病院。(正確には風紀委員が支配している)

白塗りの壁に白いベッド。特に豪華でもなく変わった病院ではない。

強いて言えばここが(風紀委員の権限で)個室なくらいだ。



「そんなことより学校は?風紀は乱れていないだろうね」

「えぇ。委員長がいらっしゃらない分、より見回り他強化してます」

「そう」



ここに入院してまだ間もない。

そもそも入院するまでの怪我でもなかったけど、ちょうど風邪をひいてこじらせそうになったから休暇がてらここにいる。


それもこれも奴のせいで……



「六道骸の追跡は?」

「全力を尽くしていますが、未だ足取りは…」



六道骸。数日前、戦りあった相手。


あぁ、もう一度奴に会ったなら今すぐにでも咬み殺したい。

名前を口にするだけでも闘争心が高まる。

僕の並盛を汚した最低最悪の僕の獲物。

一矢報いてやったはずだけど、あの後の記憶がなく奴がどうなったかも見ていない。


だから、あの時受けた屈辱と強者を咬み殺せる機会を想う気持ちが、今の僕を支配している感情。



「引き続き黒曜中と黒曜ランドも徹底的に調べて…」

「委員長」



それともうひとつ。



「その……沢田氏側であれば何か情報を握っているのではないかと…」

「…………そうだね」



結局、止めを刺し損ねた六道骸は、あの見るからに弱そうな沢田綱吉が倒したのだという。(情報提供は赤ん坊)

というか、弱かったはず。


遅刻常習犯で勉強も運動もいまひとつ。

それが僕の知る、半月前の沢田綱吉。


君はただの脆弱な草食動物だった。

もちろん僕の興味ある強者でもなかった。


それなのに、この、感情は?


彼が姿を見せなくなって半月、頭の隅の方にこびりついたような違和感。


この僕にあんな、あんなことをしておいて姿を眩ませた男。


遅刻もしなくなって(やれば出来るじゃないか)、意図して避けていることくらい分かってる。けど。



「彼も黒曜の一件でこの病院に入院しているそうですが、お連れしましょうか」



どうして、君の姿を見たいと思っている自分がいる?



「………いいよ。向こうも会いたくないみたいだし」



どうして、このまま会わなければいいと思っている自分がいる?



「…分かりました」



どうして彼一人に対してこんなに感情が生まれてくるのか自分でも分からない。

六道骸を倒したことで、君は興味の対象になったんだろうか?


それなら、“咬み殺したい”と思わないのは何故?


…いや、戦ってくれるなら是非戦ってみたいとは思う。

奴をも凌ぐ力に興味はある。


でもそうじゃない。

胸の中は、もやもやとした想いだらけで見えない。



「…花瓶の水、換えてきます」

「うん」



自分の感情に名前が付けられない……。



「!」



花瓶を持った草壁は扉を開けて足を止めた。



「あ、草壁さん…」

「君は…」



草壁はチラリとこちらを見る。

あれは対応に困っている顔だ。



「…どうしてここに?」

「えっと…その、知り合いの病室を探してて偶然」

「…………」



立ち尽くしている草壁。

相手の声は扉に阻まれて中まではよく聞こえない。



「あっ、お話聞いたりはしてませんよ!」

「そんなことを疑っては。………その君の知り合いは中に?」

「………はい。」



しかし戸惑っているように見えた草壁はすぐに柔らかい笑みを浮かべた。



「私が水を換えて戻ってくるまで、彼女を見ていてほしい」

「えっ、いや!でも…っ」

「無茶ばかりなさる人だから……頼む」



そう言って草壁は相手を中に引き込んだ。

一度頭を下げて出て行くのが視界の端に映ったけど、正直それどころではなかった。



「あ………雲雀、さん」

「さ、わだ……」



半月ぶりに見る顔と、病室に残されてしまった。





「あの、俺……雲雀さんが入院してるってリボーンに聞いて…心配に…なって」



しばらく居辛そうにしていた後ようやく口を開いたものの、その視線は定まっていない。

自分から話しかけるのはなんだか癪だったから、少し、本当に少しだけホッとした。



「君も怪我人じゃなかったの」

「そうなんですけど、でも…俺は結構早く治るみたいで…」



むしろ獄寺くん達の方が、と俯いたまま小さく呟いた。

さっき座らせたベッド脇の椅子の縁を強く握っている。



「…雲雀さんはっ!?雲雀さんは、すぐ退院出来るんですか!?」



縋るような目。

顔を上げた彼の瞳は痛いほど真摯だった。



「…平気だよ。僕は怪我で入院しているわけじゃない」

「えっ?それじゃあ……」



少し落ち着いたのか、彼の目は僕の周囲を見渡した。


ギブスも包帯も、点滴も何もない。

怪我人や病人らしい処置はこの部屋には何もなかった。



「たまには休暇もいいかと思っただけ。元はただの風邪だよ」

「風邪、ですか……」



ぽかんとした顔でこっちを見ている。

きっと拍子抜けしたのだろう。



「……じゃあ、大事ないんですね?」

「うん」

「あの時の怪我、もう治ってるんですね?」

「そうだよ」

「よ……良かったぁ…」



そう微笑んで、溜めていた息をゆるゆると吐き出した。



「大袈裟だね、君」

「そんなこと!もう俺、雲雀さんに何かあったらって気が気じゃなかったんですよ!」



あぁ良かった、と何度も繰り返して胸を撫で下ろす。

その姿は僕の知っている沢田綱吉だった。



「リボーンの奴、全然容態教えてくれないし、意味ありげに黙ってるし……は~、なんだそっかぁ」



その言葉から、彼が赤ん坊にからかわれていたのだろうということと、


この状況はどうやら赤ん坊の差し金らしい、ということが窺えた。

まったく、どこまで見透かしているんだろうね彼は。



「君に心配されるような弱者になったつもりはないんだけど」

「いやっ、もちろん雲雀さんは強いです!俺なんかよりずっと!!」

「…なら」

「でも、あんな怪我してた上に骸に乗っ取られて…使い物にならない身体だなんて言われたら心配しますよ…!」

「……六道骸はそんなこと言ってたの?」

「え、あ…はい」



まずいこと教えたかな、彼はそんな顔になった。

それでも僕は、奴を咬み殺す理由が増えたのと、そう言われた身体でもこうやって動いている優越感で少し上機嫌になった。



「ねぇ、沢田」

「うぁっ!はいっ?」



分かりやすいくらい赤くなる顔。

ただ名前を呼んだだけで。



「そんな話より、半月ぶりの再会でしょ?他に言うことないの?」

「えっ?!あ、あぁ!えっと…」


(雲雀さん、半月って数えてたんだ…)



「……すみません、でした」

「ワオ、それ本気?」

「ほ、本気ですけどっ?!」



どれほど目を合わせていても視線を逸さないあたり、本当に本気らしい。



「もっとちゃんと謝るべきだったんじゃって」

「違うでしょ。」

「え?」

「あんなことして、半月も逃げて、ようやく捕まえたと思ったら謝罪しかないわけ。」



こんなに不安定なのはもういい加減、嫌なんだ。



「…どうして君が六道骸を倒したりしたのさ」

「へっ?」

「君は脆弱な草食動物じゃなかったの?」



言わなきゃいけない言葉は、そんなものじゃないでしょ?



「君は一体、何者なの?」



じっと睨み付けると、彼は押し黙る。

そして最初はためらいがちに、それでもはっきりと言葉にする。



「俺は……俺は、あなたを好いている人間の一人です」

「そんなの、いるはずないよ」



胸がざわつく。



「ここにいます。」



か弱い草食動物の目から、僕の知らない獣の瞳になる。


君は誰?どうして僕の前にいるの?



言ってよ、沢田綱吉。



「俺はここにいて、あなたを想ってる。俺はあなたが、雲雀さんが好きです」



真っ赤になりながら、白い部屋に響く言葉。

半月の間、待ち焦がれた言葉。



「…それでキス、したの?」

「うっ、あ………はい、そうです」



くすくすと笑うと、恥ずかしそうに耳まで赤くして俯いた。

勝手にごめんなさい、そうやってまた謝る。



「沢田」

「はい!」

「僕は愛なんて知らないし、信じない。分かりたくないんだ、そんなもの」



僕が愛着を抱くのは、強い者を咬み殺せるこの力と、この並盛と学校ぐらい。

僕を愛してくれるモノを、僕は知らない。



「雲雀さん……」

「どうして、いつも自分を愛してくれているだなんて信じられるの?ヒトなんて平気で嘘を吐いて、簡単に裏切る生き物じゃない。」



愛し方も愛され方も知らないから、



「だから僕は草食動物として接するだけで、誰かを愛したことなんてないんだ」



僕の世界には咬み殺すべき弱者と、咬み殺したい強者しかいない。



「それなのに、君は見事に僕の世界に入ってきた。」



かつては確かに弱者だった。

これからは強者になるのかもしれない。


それでもたった一人、弱者でもない、強者でもない立場から侵入してきた。



「そんな君を、僕が簡単に排除すると思う?」

「…それっ、て…?」



あの時よりは遠い、けれど確実に近い距離で僕らは見つめ合う。



「僕に、教えてみる気はある?沢田」



真昼の病室で、音もなく互いの呼吸が混じり合う。



「一生分からないかもしれない感情を、それでも教えてみる気はある?どうなの、沢田」



この名前も知らない感情に、名前を付けてよ。



「…愛することがどういうことなのか、まだ俺にもよく分からない。」

「うん」

「だけど、毎日あなたを思い出して、あなたに会っただけで嬉しくなって、あなたが怪我をしていないか心配で、こうやって瞳を見て会話が出来るだけで舞い上がっている俺は、確かにここにいるんです」



堰を切ったように、半月の間溜まっていた感情を吐き出すように沢田は言った。

さっきまでの恥ずかしそうにしていた素振りもなく真っ直ぐに。



「だから俺にも愛が何なのか、今は教えられない。…けど、俺は、あなたと一緒にその答えを知りたい。」



君は知らないと思うけど、



「あなたとなら、分かる気がするんだ。」



その真っ直ぐな瞳は、存外嫌いじゃないんだよ。



「…うん、熱烈な告白だね。」

「うぅっ!俺こんな恥ずかしいこと言ったの初めてですよ!」

「……半月の間、そんなに僕が恋しかった?」

「………当たり前ですっ」



(ていうか、ちょっとくらい雲雀さんも照れてくれたってさ……悔しいよ、なんか!)



「もう恥ずかしいついでに言っちゃいますけど!」

「何?」

「本当は俺、雲雀さんが校庭歩いてるのとか気付かれないように窓からこっそり見てたし!遅刻しちゃおうかとか、何度も話しかけそうになったし!」

「うん」

「俺の知らない間に黒曜に乗り込んだって聞いてすごい心配で、追っかけてったら雲雀さん傷だらけだし!なのに強くて格好良いし!」

「ワオ、すごい惚気。」

「っ、ただでさえ骸に何かされてるんじゃって心配してたのに、身体乗っ取られて、頭にきて…」

「うん」

「さっきなんか、心配してたのに全然ケロッとしてる雲雀さん見て……」

「見て?」


「……安心して…泣きそうに…っ」



俯いた肩が震えてる。


彼が誰かが傷つくのとか、そういうのが本気で嫌な子なんだって僕は知ってる。



だから、心配されるのは嫌だって、心配しなくてもいいってさっきから言ってるのに!



「鈍い子は嫌いだよ。」



あぁ、僕らはなんて正反対なんだろう!



「雲雀、さ」


「君を泣かせるために、僕は生きてるんじゃないよ。」


「………」



(こ、殺し文句だ……)


分かりやすいように言ってやると、彼は鼻をすすった。



「…そう…ですよね、もっと違う表現で言わなきゃ」

「うん?」

「“雲雀恭弥”がこの世界で生きてる、それだけで、俺は神様にありがとうって言いたいんですよ!」



惜しげもなく向けられる笑顔。


この笑顔を、大事に想う時は来る?



「…今のは少し面白かった。」

「?」



それも悪くないかもしれない。



「…あのですね、雲雀さん」

「何?沢田」

「大切になりたいなんて贅沢は今は言いません。だけど、だけど雲雀さん、」



キュッと握られる手。



「俺は、あなたにとってのヒトでありたい。」



嫌いじゃない、真っ直ぐな瞳で。



「僕に嘘を吐いて裏切る、そんなものになりたいの?」

「…そういうこともあるかもしれません。でも、草食動物として接せられるよりはずっと良い。」



揺るがない瞳に囚われる。



「確かに嘘を吐くかもしれない。あなたの期待や気持ちを裏切ることも、絶対に無いとは言わない。」



握っていた手は、そっと頬に伸ばされる。



「だけど…あなたにこんな風に触れて、熱くなって、想い焦がれることが出来るのはヒトだからでしょう?」



(あなたにヒトとして触れたい。あなたの心に。)

(いろんな感情を知ってほしい。)

(肌の熱も、あなたを想う熱も、すべて。)



「この特権を失くしたら、俺は恋することさえ分からなくなるから。」



頬を覆う熱に、そっと触れた。

予想外に熱くて、じわりと溶け合ってくる。



「…恭弥さん」

「ん、」



耳元で囁くのは卑怯だと思いながら身を委ねてしまうと、


なんとなくあの時の沢田の気持ち、今なら分かる気がした。



「…それにほら、いい意味であなたを裏切ることもある」

「………………なるほどね。」

「はは、あんまり動じてくれないところは半月前と変わりませんね」



そうでもないんだよ?と言うにはあまりにも癪で。



「君もね。意外と照れない」

「いやぁ、内心ドキドキしてます。」

「…へぇ」



意外なところで正反対な僕らの共通点を発見してしまった。

言葉に出るほど動じていないフリをして、本当は真っ赤に染まってる。



「あぁでも、少し髪伸びましたよね?」

「!」

「綺麗だなって見てました。良いなぁ」

「…………君、覚えてるの?」

「え、何をですか?」



初めて君を認識した日。


屋上で会ったあの日、最初に僕の世界(ココロ)に侵入した言葉。



「……………いいよ。というか、そんなに触らないっ」

「えぇ~」

「そんな声出してもダメ。」



やっぱり鈍いよ、綱吉。


(そんなんじゃ、まだまだ足りないよ。)



「……あんまり調子に乗ると…」



だから髪、もう少しの間……伸ばそうかな。



「ひ、雲雀さん落ち着いて。トンファーしまってください!」

「嫌だよ。」

「ひぃっ!大体なんで病院でも持ってるんですかっ!!?」

「いつでも一緒だから。」

「羨ましいっ!」

「…バカ。」




怪我も病気もしてないはずが、




気付かぬうちに恋の病。
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