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管理人黒峰の日々の徒然。 主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
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特区日本設立パロディ、始動しました。
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)


本編ではギアスの暴走によって阻まれてしまった特区日本ですが、
このパロディではそれが起こらず、設立が成功した場合を描いています。

ゼロとユフィの協定が成功しているので、嫌悪感等を抱かれる方はご留意ください。

メインの目的が幸せな騎士姫なので、世界情勢諸々はご都合主義なところもあるかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。

目の前に広がる大勢の人の海を見つめて、ユフィことユーフェミアはこっそりと溜めていた息を吐いた。

胸中に篭ったままだった緊張と不安を、隣にいるダールトン達に聞こえぬように。



大丈夫……。

自分にしか聞こえぬ声で呟く。



今まで立ってきたどの公式の場よりも、自分にかかる期待やプレッシャー、責任は大きい。

これはそれだけ大きな式典、いわば改革。

目の前の大勢の人の波を見るのは初めてじゃない。


けれど今目の前にいるのは、自分の考えに賛同してくれた人たち。


そう、頭脳明晰な兄でもなく、剛毅な姉でもなく、他の誰でもない“私”の考えに賛成してくれた人たち。


絶対に、裏切りたくない。

そう思うと、胸がキュッと苦しくなった。

どうにか和らげようと、もう一度息を吐き出す。



少しだけ軽くなった胸にもうひとつ、大切なものを抱く。

この大舞台に、それでも負けずに、逃げずに、此処に立っていられる理由。


優しい翠色をした大きめの瞳に、ふわりとカーブを描くブラウンのクセっ毛。

明るい人柄の奥に哀しい過去を独りで背負って、時折ふと見せる憂いた表情。

響いてくる、自分を励ましてくれたあの心地いい声。



誰よりも大切な、大好きな、愛しい人。



「ユーフェミア様、そろそろお時間です」




見ていてください、スザク。




「これより、経済特区日本建設記念式典を執り行います!」






大丈夫。





私もう、お飾りの人形じゃないよ。






僕らの夢  -Time after home...-







ユフィの考案した特区日本建設構想は、それは瞬く間に多方面に波紋を呼んだ。



この一見突拍子もなく、取るに足らない夢物語にしか思えないような発表が、

二百万以上の民衆だけでなく、黒の騎士団をも、ゼロをも巻き込んでしまった。


地域限定とはいえ、ブリタニアが占領地であるイレヴン、いや“日本”の存在を認めたのだ。


この前代未聞の構想のもつ意味は想像以上に大きい。

日本の多くのテロ組織を鎮圧出来るだけでなく、世界中のレジスタンスの対応も変わるだろう。

何よりもブリタニア第三皇女自らの宣言とあれば、その影響力は他者の比較にならない。



そして今ユフィは別室でゼロと会談している。


騎士団を率いてきたゼロと協力してこの特区を造り上げようと考えたユフィ。


本当にゼロはユフィに協力しようとしているのだろうか?

それはまだ分からないが、この話し合いが上手くいけば……。


様々な懸念が蠢く間にも今、年端もいかない少女の口から発せられた理想は、現実になろうとしているのだ。





俺もここで、それを祈っている。


彼女に万が一何かあれば、許しはしない、ゼロ。



そう決意して腰に携えた剣の柄を握った時、少し遠くで、ざわめきが聞こえた。



「人々よ!!」


低くて、厳かで、重圧的な男の声。

イレヴンとなった日本人たちに奇跡を見せつけてきた男の声だ。


「我々は虐げられる力なき民の為に力を尽くし、悪に屈することなくこれを裁いてきた!」


二百万以上の視線が仮面の男に釘付けになっている。


「その努力が今、この世界に新たな歴史の幕を開かせた!」


男がマントを翻すと、大勢の人の息遣いが手に取るように分かった。

誰もが息も出来ないほどの見えない圧力に気圧されている。




「これより我々黒の騎士団は、正式に特区日本への参加を表明する!」




それに呼応するように、人の海にどよめきという波が生まれた。




「ゼロが……」


「黒の騎士団が…本当に…?」



「……ゼロが…日本に参加…!」




そしてあっという間に、波は歓声に変わった。



「ゼロ!ゼロ!ゼロ!」



男の名は何度も呼び繰り返される。




「ユフィ………本当に君は……」



正直、信じられなかった。


だから今、ただ目の前の現実を見つめることしか出来なくて。




「上手く……いったのか……?」




本当に、日本が始まる?




「ゼロ……決断してくれて、ありがとう」



男の声に代わり、まだいくらか幼さの残る声がスピーカーを通して会場全体に響く。


……少しだけ緊張している……いや、泣きそうな、声?


「我々はブリタニアに下るわけではない。」

「もちろんです」

「黒の騎士団の新たな存在意義は、この特区日本の“平等”が正しく正義の元に行使されることを見守っていくことだ」

「はい」


「誰もが平等に、安全に、平和に…幸福に。君のその理想を信じよう、ユーフェミア皇女殿下」

「私達で、優しい世界を創っていきましょう。ゼロ」



でもきっと、彼女は笑っている。





二人の間で結ばれた手に、会場は大きな拍手で包まれた。





******************




「スザク!どこですか?」

「…ユフィ」

「あ!此処にいたんですね!」



会場入口の近く、暗くなり始めた夕闇の中でユフィは僕を見つけた。

パタパタと駆け寄ってくる彼女の顔には至極嬉しそうな笑みがある。


「会場内を探しても見つからなかったので…心配したんですよ?」

「ごめん……少し、風に当たりたくて」

「そうですか…、長い式典でしたしね。お疲れ様でした」


ユフィはそう言って僕を労わる。


「…それで、聞いてくれていたと思うけど、特区の開設が上手く……スザク?」


聞き返す前に、もう僕の異変に気付いていたであろうユフィ。

見つめてくる彼女の視線から逃げるように、僕は再び夕焼け空へと顔を向けた。


「ユフィ…も…その、お疲れ、様…っ…」

「……泣いているのね、スザク」


ユフィの手が、そっと僕の両手を包む。

少し躊躇したけれど、その体温に促されて大人しく顔を見せた。


「……すみません」

「涙もろいスザクも大好きですよ?だから謝らないで?」


照れたようにくすくすと笑いながら、ユフィは優しく僕の頭を撫でた。

彼女の体温が、まるであの夕焼けみたいに染みてくる。


「ごめ…ん、本当なら僕が……格好良く、君を抱きしめられたら良いのに……」


理想のために頑張った君を。

平和のために沢山のものを捨ててしまった君を。


僕が泣いている場合じゃないのは分かっているのに。


「止まら、なくて……っ」


「スザク……」

「こんな時まで……ダメだな、僕は……」


ユフィは首をゆっくりと横に振った。


「ずっとスザクの願っていたことが、ようやく、少しだけ叶うの」


切ない、少しだけ、自分を責めているような声だった。

誰にも言っていないユフィの小さな心の曇り。


日本の、小さな地域でしか、この特区を確立出来なかったことが、悔しい。



どうしようもなく不安なのだ。

設立がなんとか上手くいっただけで、まだ本当は、世界は何も変わってはいない。



それでも。



「スザクの生きている理由がやっと世界に、現実になるのです」

「うん……」

「今まで、頑張りましたね」


頬を撫でてくれる君の手に、自分の手を重ねる。


「君も頑張ったね、ユフィ」


踏み出した一歩は大きい。


「頑張ったね……」


何度も頬を撫でる真っ白な手の体温が、様々な色を含んだ涙を受け止めてくれた。


喜び、後悔、謝罪、懺悔、決意。


色々なものを、決して大きくはない掌が受け止めようとしてくれる。



この温かさに救われたんだと思うと、苦しいくらいの幸せが胸を占める。



「えっと………仕切りなおし、いいかな」


照れくささなんかは見ないフリをして、僕はユフィを抱きしめた。

腕にすっぽりと収まった華奢な肩に力をこめる。


「ねえユフィ」

「なんですか?」

「此処にいてくれてありがとう。皆を想ってくれてありがとう。」


誰にも開けないと思っていた、開けようと思うことすら無謀な扉を、君はいつも開けてしまうから。


俯いていた、目を背けた日々に、突然君がいて。

強い力じゃない、真っ直ぐな気持ちで、柔らかな温度で。



そんな君が笑うだけでこんなに嬉しくて………こんなに、大切で。



「ありがとうユフィ。……何回言っても足りないんだ」

「スザクが一緒に頑張ってくれたから、勇気をくれたから、私も頑張れたんですよ」



背中に回された腕から、心地いい力が伝わってくる。



「私こそ、スザクにどれだけありがとうって言えばいいのか分かりません」

「ユフィ……」


そっと音もなく、伸びる二つの影が近付く。


「きっと私だけじゃ、こんなこと出来なかったって…そう思います」



人形だった私に動き出す力をくれたのは、他の誰でもない貴方。


誰かの為に死ぬんじゃなくて、誰かの為に生きたい。

そう想えるようになったのは、他の誰でもない貴女がいたから。



嘘みたいな偶然、夢みたいな出会いから始まって、

いつの間にか、いつからか、お互いがこんなに大きな存在になって、


誰よりも幸せになってほしくて、

誰よりも幸せにしたくて、


一緒に夢がみたくて、ここまで一緒に歩いてきたのはアナタだから。



「ユフィが」
「スザクが」



「好きです」




そのままそっと、影がひとつになる。





「…………好きだよ」



ひとつになった影が、緩やかに夕闇へ溶けてゆく。

それでも夕陽のせいじゃなく、ただ頬を染めた君が愛しくて、もう一度深く口付けた。



「…スザク…」

「……何だい?」



「私ね、この特区日本が設立出来たら、まずスザクに言いたいことがひとつあったの」




ユフィは瞳を閉じて。



「ここは貴方の知っている日本ではまだないけれど」



大好きな笑顔をくれる。




「お帰りなさい、スザク。」




「………!」




あぁ、君は本当に、どれだけのものをくれるんだろう。


生きる罰が欲しかっただけの僕に、君は生きる理由をくれたんだ。




「…ただいま、ユフィ。」




君が、今の俺の、生きる理由なんだ。




「ただいま!」







俺はこの小さな日本に、もう一度立っている。



優しい未来を、居場所を、理由を、許しを、愛情を。



たくさんのものをくれた君の傍で、俺はこれから生きていく。




この大切な人の、かけがえのない人の隣で。






これ以上の幸せなんて、あるのかな…?









君が語った夢、幸せな未来。



君と見た夢、君と創った場所。



まるで白紙の絵本のよう。


すぐそこにある。




そう、此処は、真っ白な日本。





ここからもう一度、日本は生まれる。
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