管理人黒峰の日々の徒然。
主に視聴アニメやらでの叫びなど。なんだかんだうだうだ言ったり空元気でテンション高かったり色々!
特区日本設立パロディ、第2弾になります。
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)
第1弾は設立時の様子を描きましたが、こちらはその式典から一週間後の日常です。
ようやく甘々な感じになったでしょうか…いけしゃあしゃあなスザクさんです。笑
ゼロとユフィの協定が成功しているので、嫌悪感等を抱かれる方はご留意ください。
メインの目的が幸せな騎士姫なので、世界情勢諸々はご都合主義なところもあるかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。
(サイト閉鎖に伴い、加筆修正した上での再掲載になります※加筆修正2011/2/10)
第1弾は設立時の様子を描きましたが、こちらはその式典から一週間後の日常です。
ようやく甘々な感じになったでしょうか…いけしゃあしゃあなスザクさんです。笑
ゼロとユフィの協定が成功しているので、嫌悪感等を抱かれる方はご留意ください。
メインの目的が幸せな騎士姫なので、世界情勢諸々はご都合主義なところもあるかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。
あの特区日本建設記念式典から一週間。
世間も未だこの異例の事態に良くも悪くも興味を示したまま、漸く日本は動き出した。
「ふ……っ」
真剣な顔で前を見つめるスザクの額を一筋の汗が伝う。
朝陽が昇ってからまだ間もない。
足りていない施設や家屋の急ピッチでの建設でトラックやトレーラーの出入りが激しく、忙しないこの特区日本も深夜から早朝までは静かなものだ。
式典は執り行われたけれど、特区の住人はまだいない。
なにしろ急な提案だったために何もかもが準備段階なままなのである。
200万以上の人間が暮らすにはまだ少しの時間が必要だった。
そんな中、特区の提案者であるユフィとその騎士として、スザクは数日前いち早く住居をここに移した。
治安などの問題もありコーネリアはとても反対していたけれど、ユフィは自らが特区で共に生活することで少しでも誠意を示し信頼を得るためだと譲らなかった。
(あんなにはっきりと総督に対して意見を言うユフィは初めて見たな……)
いつだったか、自分はお飾りの副総督で足手まといで何も出来ない、と言っていたユフィ。
そんな彼女がコーネリアに対して真っ直ぐに、しかも“いきなり”ではなく正面から自分の意見を通せたこと。
本人は気付いていないようだけれど、彼女は確実に変わってきている。
「本当にそうだとしたら、私には隣にいてくれる人が……スザクがいるからよ」
なんて彼女は言うのだから、くすぐったいくらい、スザクは温かい気持ちになった。
(…僕も何か変わっただろうか……)
ユフィの隣に立って、恥ずかしくない自分になれているだろうか。
こうして身体を動かすことくらいしか、自分には確かなものが少なすぎて時折不安になる。
皇位継承権を返上したユフィに本来騎士をつける権限はない。
現にスザクは正式な“名誉騎士侯”という立場では既にないのだ。
けれど何より自分が彼女の傍にいたくて、支え合いたくて、自ら此処にいることを望んだ。
だからこそ、彼女に恥じない自分でありたい。
(自分を嫌いにならないためにも……)
シュナイゼルとコーネリアから強く推されたのもあり、そうしてスザクはユフィと共に特区での生活を選んだのだ。
(でもコーネリア総督はすごく複雑そうな顔をしていたっけ……)
乾いた笑いを一人浮かべると、ひょっこりと扉から覗く瞳に気付いた。
「ユフィ?」
「あ……邪魔しちゃいましたか?スザク」
「ううん、そろそろ今日はここまでにしようかと思ってたから」
「良かった。飲み物とタオル持ってきましたよ。毎朝お疲れ様」
「あぁ、ありがとう」
安心したように顔を出して歩み寄るユフィ。
手渡されたタオルで汗を拭うと、ユフィの頬がほんのりと赤い。
「どうかした?」
覗き込むと、ユフィは少し驚いて肩をひくりと揺らす。
直視するスザクの視線から逃げるように、俯き加減でこちらを窺うユフィが愛らしい。
「あ…えーっと、特区に来るまで…その、袴姿のスザクって見たことがなかったから…」
「これは昔からの習慣でね、訓練の時は袴じゃないとなんだか落ち着かないんだ。…変かな?」
「そんなこと!とっても似合ってます!!」
「はは…ありがとう」
面と向かってそこまで力説されると照れくさいのだけれど。
「きっとユフィも着物を着たら、とても可愛いと思うよ」
「!…もうっ、からかわないでください!」
そんなことを言いながら二人は笑い合った。
「スザクったら……意地悪ですよ?」
「あはは、ごめんごめん」
「それにしても、毎朝こうやって訓練してるのね」
「うん。基礎体力は大事だし、ロイドさんにもランスロットを動かすために筋力を維持しろって言われてるからね」
「大変なんですね……」
「習慣だからそうでもないよ。でも道場で出来るのは嬉しいかな。昔はよく稽古してもらったからやりやすいよ」
「スザクが道場を造ってほしいって言ったのはそのためだったのね」
必要な施設をリストアップしている時に悩んでいたユフィが、せっかくだから何か自分の希望はないかと聞いてくれたのだ。
「軍の訓練所で袴は目立つから今まではちょっと大変だったんだ。すごく助かったよ」
「ここなら色んな人がスポーツで利用出来るし、私こそ助かりました」
初めユフィに道場とは何かというところから教えなければならなかったことを思い出して、スザクはこっそりと苦笑した。
もちろん充実した特区にと努力する彼女に協力は惜しまないけれど。
「あ、随分話し込んじゃいましたね。朝ご飯出来てますよ。そろそろ戻りましょうか」
「そうだね。僕は着替えてから行くから、ユフィは先に戻ってて」
「はい。じゃあまた後で」
「うん」
ユフィはスザクの手からタオルを受け取って道場を後にした。
こんな感じで二人の一日は始まる。
大好きな人と笑顔を交わして始まる一日が――………
カリッと小気味の良い音を立ててトーストが割れる。
今朝はこんがりとキツネ色に焼けたトーストにたっぷりと蜂蜜をかけたハニートースト、それにバニラアイスを添えたユフィお手製の朝食。
少しこんがりとしすぎている部分もあるが、スザクはそれも愛嬌と思ってただ嬉しそうに頬張った。
「…どうかしら?今日は上手く出来た方だと思うんだけど……」
小さなテーブルの向こう側で心配そうにこちらを見つめるユフィにスザクは努めて微笑んだ。
「うん、丁度良い甘さになってる」
「本当に?…無理をしてませんか?」
「大丈夫、美味しいよ」
まだ不安そうにこちらを見つめるユフィだったけれど、崩れないスザクの笑顔を見ているうちにホッと息をついた。
「良かったぁ……」
この家に住むようになって、とりあえず二人は家事を分担することにした。
食事の当番は主にユフィ。彼女の一日の行動範囲はほとんど特区内になるからだ。
「本当はね、和食も作れるようになりたいの。せっかくスザクと一緒に暮らしているんだし…」
何気ない後半のセリフに、なんだか照れてしまったのはスザク本人以外知らない。
「…でもルルーシュが、まずは自分に馴染みのある洋食が作れるようになってから、って……」
「ルルーシュが?」
「えぇ」
そう言ってしゅんとした顔をするユフィ。
実はユフィとルルーシュ、そしてナナリーの三人は学園祭の時に七年ぶりに再会していたらしい。
ユフィはもちろん二人の事を他言していないし、そんな彼女を信用して二人もいずれ特区に移って来る予定なのだと。
それを聞かされた時、スザクは初めてユフィがこの特区の設立に踏切った理由がようやく分かった気がした。
スザクはゼロの正体がルルーシュだということは知らないままなのだけれど。
「基本を覚えないうちに応用に挑戦するのはやめてくれって言われちゃいました」
今はまだアッシュフォードで暮らしているルルーシュは、こっそりとこの家に来てはユフィに料理を指南している。
スザクがそれを知った時、相当驚いたのはまだ記憶に新しい。
「君のことを心配してるんだよ。毎日増えてるじゃないか、その絆創膏」
「こっ、これは…」
ユフィはミルクティーに伸ばそうとしていた手を慌てて引っ込める。
その白い指には似合わない絆創膏が不格好に何枚も巻き付いていた。
「ちゃんと血は洗って消毒した?火傷は?深く切ったりはしてない?」
「大丈夫です!それに今朝は一度も切ってません!」
顔を赤らめながら再びカップに手を伸ばすユフィ。
絆創膏だらけのその指をスザクは刺激しない程度に柔らかく握った。
「なら良いんだ。ユフィがご飯を作ってくれてとても幸せだけど、小さな傷でも君が怪我をするのは見ていて辛いから」
「スザク……、ごめんなさい。これからはもっと気をつけますね」
「うん、そうして?」
そう言うと絆創膏の間を縫って、スザクは指先に触れるだけのキスを落とす。
突然のことにユフィはかあっと音が聞こえそうなほど真っ赤になった。
「…ちょっとやりすぎた?」
そんなユフィを可愛いなぁとか呑気に思いながら軽く笑うスザク。
「もぉ、まだ朝ですよ、朝!」
こんな風に毎日ドキドキさせられっぱなしなのが少し悔しい。
それでもユフィは、これ以上心配をかけないように早く上達しようとこっそり決心した。
「ほら、学校遅刻しちゃいますよ!」
「あぁ本当だ、もうこんな時間…!」
時計はそろそろ出て行かなければならない時間を指そうとしている。
ユフィは先に立って、壁に掛けておいたスザクの上着を取った。
それを受け取ってカッターシャツの上に通すスザク。
「ご馳走さま、美味しかったよ。食器洗えなくてごめんね、ユフィ」
「気にしないで。その代わり遅刻したらダメですよ?」
「うん、急ぐよ」
先程の袴姿とはまた違って、黒地の制服を纏ったスザクは年相応の学生らしい、それでいて幼さの中に凛とした空気を持っていた。
ユフィのたっての希望でスザクはここからアッシュフォード学園に通っている。
特区に学校が出来ればそちらに移る予定だが、それまでは今まで通り学園に通うことにしたのだ。
「今日は軍の方は?」
「召集はかかっていないから、何もなければ帰ってくるつもり。呼ばれる可能性は十分あるけどね」
「分かりました。お夕飯は作っておきますけど、遅くなるようなら」
「ちゃんと連絡するよ。緊急事態だったら連絡遅くなるかもしれないけど…」
ユフィが頷いたのを確認して、爪先でトントンと床を鳴して靴を履く。
「気をつけてくださいね」
「最近はテロ組織も鎮静化しているから大丈夫だよ。ユフィこそ、まだここの治安は不安定なんだから気をつけて」
スザクの肩にそっと触れるユフィ。
「えぇ。何かあったらすぐにスザクを呼ぶわ」
小さなリップ音が玄関に響く。
ユフィのちょっとした仕返しの印がスザクの頬にうっすらと残った。
「な…っ!?ユフィ!」
「ふふっ、行ってらっしゃいスザク」
「……あぁもう、君には敵わないな…」
このやりとりがなんだかまるで新婚夫婦のそれのようで、どうしようもないくらい顔が熱くなる。
「行くのが惜しくなるじゃないか」
そうこぼして、短い時間だったけれどスザクはユフィを抱き締めた。
「……うん、なるべく早く帰るから」
「はい。待ってます」
「帰ったら、」
「?」
鞄を持ってドアノブに手をかける。
「…ううん、今は内緒。行って来ます」
意味深な言葉を残したまま、スザクは扉から出ていった。
HONEY HONEY DAYS
(あぁ、僕は今、怖いくらい、幸せなんだ)
世間も未だこの異例の事態に良くも悪くも興味を示したまま、漸く日本は動き出した。
「ふ……っ」
真剣な顔で前を見つめるスザクの額を一筋の汗が伝う。
朝陽が昇ってからまだ間もない。
足りていない施設や家屋の急ピッチでの建設でトラックやトレーラーの出入りが激しく、忙しないこの特区日本も深夜から早朝までは静かなものだ。
式典は執り行われたけれど、特区の住人はまだいない。
なにしろ急な提案だったために何もかもが準備段階なままなのである。
200万以上の人間が暮らすにはまだ少しの時間が必要だった。
そんな中、特区の提案者であるユフィとその騎士として、スザクは数日前いち早く住居をここに移した。
治安などの問題もありコーネリアはとても反対していたけれど、ユフィは自らが特区で共に生活することで少しでも誠意を示し信頼を得るためだと譲らなかった。
(あんなにはっきりと総督に対して意見を言うユフィは初めて見たな……)
いつだったか、自分はお飾りの副総督で足手まといで何も出来ない、と言っていたユフィ。
そんな彼女がコーネリアに対して真っ直ぐに、しかも“いきなり”ではなく正面から自分の意見を通せたこと。
本人は気付いていないようだけれど、彼女は確実に変わってきている。
「本当にそうだとしたら、私には隣にいてくれる人が……スザクがいるからよ」
なんて彼女は言うのだから、くすぐったいくらい、スザクは温かい気持ちになった。
(…僕も何か変わっただろうか……)
ユフィの隣に立って、恥ずかしくない自分になれているだろうか。
こうして身体を動かすことくらいしか、自分には確かなものが少なすぎて時折不安になる。
皇位継承権を返上したユフィに本来騎士をつける権限はない。
現にスザクは正式な“名誉騎士侯”という立場では既にないのだ。
けれど何より自分が彼女の傍にいたくて、支え合いたくて、自ら此処にいることを望んだ。
だからこそ、彼女に恥じない自分でありたい。
(自分を嫌いにならないためにも……)
シュナイゼルとコーネリアから強く推されたのもあり、そうしてスザクはユフィと共に特区での生活を選んだのだ。
(でもコーネリア総督はすごく複雑そうな顔をしていたっけ……)
乾いた笑いを一人浮かべると、ひょっこりと扉から覗く瞳に気付いた。
「ユフィ?」
「あ……邪魔しちゃいましたか?スザク」
「ううん、そろそろ今日はここまでにしようかと思ってたから」
「良かった。飲み物とタオル持ってきましたよ。毎朝お疲れ様」
「あぁ、ありがとう」
安心したように顔を出して歩み寄るユフィ。
手渡されたタオルで汗を拭うと、ユフィの頬がほんのりと赤い。
「どうかした?」
覗き込むと、ユフィは少し驚いて肩をひくりと揺らす。
直視するスザクの視線から逃げるように、俯き加減でこちらを窺うユフィが愛らしい。
「あ…えーっと、特区に来るまで…その、袴姿のスザクって見たことがなかったから…」
「これは昔からの習慣でね、訓練の時は袴じゃないとなんだか落ち着かないんだ。…変かな?」
「そんなこと!とっても似合ってます!!」
「はは…ありがとう」
面と向かってそこまで力説されると照れくさいのだけれど。
「きっとユフィも着物を着たら、とても可愛いと思うよ」
「!…もうっ、からかわないでください!」
そんなことを言いながら二人は笑い合った。
「スザクったら……意地悪ですよ?」
「あはは、ごめんごめん」
「それにしても、毎朝こうやって訓練してるのね」
「うん。基礎体力は大事だし、ロイドさんにもランスロットを動かすために筋力を維持しろって言われてるからね」
「大変なんですね……」
「習慣だからそうでもないよ。でも道場で出来るのは嬉しいかな。昔はよく稽古してもらったからやりやすいよ」
「スザクが道場を造ってほしいって言ったのはそのためだったのね」
必要な施設をリストアップしている時に悩んでいたユフィが、せっかくだから何か自分の希望はないかと聞いてくれたのだ。
「軍の訓練所で袴は目立つから今まではちょっと大変だったんだ。すごく助かったよ」
「ここなら色んな人がスポーツで利用出来るし、私こそ助かりました」
初めユフィに道場とは何かというところから教えなければならなかったことを思い出して、スザクはこっそりと苦笑した。
もちろん充実した特区にと努力する彼女に協力は惜しまないけれど。
「あ、随分話し込んじゃいましたね。朝ご飯出来てますよ。そろそろ戻りましょうか」
「そうだね。僕は着替えてから行くから、ユフィは先に戻ってて」
「はい。じゃあまた後で」
「うん」
ユフィはスザクの手からタオルを受け取って道場を後にした。
こんな感じで二人の一日は始まる。
大好きな人と笑顔を交わして始まる一日が――………
カリッと小気味の良い音を立ててトーストが割れる。
今朝はこんがりとキツネ色に焼けたトーストにたっぷりと蜂蜜をかけたハニートースト、それにバニラアイスを添えたユフィお手製の朝食。
少しこんがりとしすぎている部分もあるが、スザクはそれも愛嬌と思ってただ嬉しそうに頬張った。
「…どうかしら?今日は上手く出来た方だと思うんだけど……」
小さなテーブルの向こう側で心配そうにこちらを見つめるユフィにスザクは努めて微笑んだ。
「うん、丁度良い甘さになってる」
「本当に?…無理をしてませんか?」
「大丈夫、美味しいよ」
まだ不安そうにこちらを見つめるユフィだったけれど、崩れないスザクの笑顔を見ているうちにホッと息をついた。
「良かったぁ……」
この家に住むようになって、とりあえず二人は家事を分担することにした。
食事の当番は主にユフィ。彼女の一日の行動範囲はほとんど特区内になるからだ。
「本当はね、和食も作れるようになりたいの。せっかくスザクと一緒に暮らしているんだし…」
何気ない後半のセリフに、なんだか照れてしまったのはスザク本人以外知らない。
「…でもルルーシュが、まずは自分に馴染みのある洋食が作れるようになってから、って……」
「ルルーシュが?」
「えぇ」
そう言ってしゅんとした顔をするユフィ。
実はユフィとルルーシュ、そしてナナリーの三人は学園祭の時に七年ぶりに再会していたらしい。
ユフィはもちろん二人の事を他言していないし、そんな彼女を信用して二人もいずれ特区に移って来る予定なのだと。
それを聞かされた時、スザクは初めてユフィがこの特区の設立に踏切った理由がようやく分かった気がした。
スザクはゼロの正体がルルーシュだということは知らないままなのだけれど。
「基本を覚えないうちに応用に挑戦するのはやめてくれって言われちゃいました」
今はまだアッシュフォードで暮らしているルルーシュは、こっそりとこの家に来てはユフィに料理を指南している。
スザクがそれを知った時、相当驚いたのはまだ記憶に新しい。
「君のことを心配してるんだよ。毎日増えてるじゃないか、その絆創膏」
「こっ、これは…」
ユフィはミルクティーに伸ばそうとしていた手を慌てて引っ込める。
その白い指には似合わない絆創膏が不格好に何枚も巻き付いていた。
「ちゃんと血は洗って消毒した?火傷は?深く切ったりはしてない?」
「大丈夫です!それに今朝は一度も切ってません!」
顔を赤らめながら再びカップに手を伸ばすユフィ。
絆創膏だらけのその指をスザクは刺激しない程度に柔らかく握った。
「なら良いんだ。ユフィがご飯を作ってくれてとても幸せだけど、小さな傷でも君が怪我をするのは見ていて辛いから」
「スザク……、ごめんなさい。これからはもっと気をつけますね」
「うん、そうして?」
そう言うと絆創膏の間を縫って、スザクは指先に触れるだけのキスを落とす。
突然のことにユフィはかあっと音が聞こえそうなほど真っ赤になった。
「…ちょっとやりすぎた?」
そんなユフィを可愛いなぁとか呑気に思いながら軽く笑うスザク。
「もぉ、まだ朝ですよ、朝!」
こんな風に毎日ドキドキさせられっぱなしなのが少し悔しい。
それでもユフィは、これ以上心配をかけないように早く上達しようとこっそり決心した。
「ほら、学校遅刻しちゃいますよ!」
「あぁ本当だ、もうこんな時間…!」
時計はそろそろ出て行かなければならない時間を指そうとしている。
ユフィは先に立って、壁に掛けておいたスザクの上着を取った。
それを受け取ってカッターシャツの上に通すスザク。
「ご馳走さま、美味しかったよ。食器洗えなくてごめんね、ユフィ」
「気にしないで。その代わり遅刻したらダメですよ?」
「うん、急ぐよ」
先程の袴姿とはまた違って、黒地の制服を纏ったスザクは年相応の学生らしい、それでいて幼さの中に凛とした空気を持っていた。
ユフィのたっての希望でスザクはここからアッシュフォード学園に通っている。
特区に学校が出来ればそちらに移る予定だが、それまでは今まで通り学園に通うことにしたのだ。
「今日は軍の方は?」
「召集はかかっていないから、何もなければ帰ってくるつもり。呼ばれる可能性は十分あるけどね」
「分かりました。お夕飯は作っておきますけど、遅くなるようなら」
「ちゃんと連絡するよ。緊急事態だったら連絡遅くなるかもしれないけど…」
ユフィが頷いたのを確認して、爪先でトントンと床を鳴して靴を履く。
「気をつけてくださいね」
「最近はテロ組織も鎮静化しているから大丈夫だよ。ユフィこそ、まだここの治安は不安定なんだから気をつけて」
スザクの肩にそっと触れるユフィ。
「えぇ。何かあったらすぐにスザクを呼ぶわ」
小さなリップ音が玄関に響く。
ユフィのちょっとした仕返しの印がスザクの頬にうっすらと残った。
「な…っ!?ユフィ!」
「ふふっ、行ってらっしゃいスザク」
「……あぁもう、君には敵わないな…」
このやりとりがなんだかまるで新婚夫婦のそれのようで、どうしようもないくらい顔が熱くなる。
「行くのが惜しくなるじゃないか」
そうこぼして、短い時間だったけれどスザクはユフィを抱き締めた。
「……うん、なるべく早く帰るから」
「はい。待ってます」
「帰ったら、」
「?」
鞄を持ってドアノブに手をかける。
「…ううん、今は内緒。行って来ます」
意味深な言葉を残したまま、スザクは扉から出ていった。
HONEY HONEY DAYS
(あぁ、僕は今、怖いくらい、幸せなんだ)
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