今度は座敷童ちゃん視点です。
「君は…」
「…!」
―…うそ…っ!;///
「座敷童…!」
『キセキ』
「!////」
グラ…ッ―…
「きゃあっ;!//」
「あぁっ;!」
―ザバーンッ!!
二つの悲鳴が重なり、水しぶきが高く上がる。
突如バランスを崩した少女は、笛を片手にそのまま下の池に真っ逆さま。
ピンクを基調とした振袖から藍色の髪まで、びしょ濡れになっている。
「大丈夫っ!?」
バシャバシャと水の跳ねる音と一緒に、四月一日は彼女に駆け寄る。
―…本物なの?それとも夢…?
「は、はい…っ///」
四月一日はまだ座敷童が戸惑っている間に、水を吸った着物の裾を引き上げる。
「あーあ…着物びしょ濡れだ…」
「あ、あのあのっ;!どうしてこの山に…っ!?;///」
笛を握り締め、もっともな質問をする座敷童に、何故か四月一日も疑問を抱いた。
「え、ここって…山なの?」
「え?」
「え…?」
双方固まるばかり。
「…あ、ごめんっ!冷たいよね!とりあえずここから出よう。…立てる?」
我に返った四月一日は、彼女を起こそうと手を目の前に差し出す。
「ぁ…あの…//」
「?…つかまって?」
その言葉に一瞬硬直しながらも、遠慮がちに延ばされた手を取る座敷童。
「は、はい…///」
「よいしょ…っと」
「……////」
引き上げて、繋いだままの大きな手。
「……あっ;//」
お互いに気付いたように声を発し、どちらからともなくパッと手が離される。
「とっ、とりあえずあの岩にでも座って着物乾かそう;!…ね;//」
そう言って、四月一日は足早に岩場へと足を向けた。
その頬は少し赤い。
―…聞こえないように、でも、後でちゃんと言おう。
そう思いながら呟いて、座敷童は後について行った。
「……ありがとう//」
◆
「えーっと…シワにならないように…ちゃんと真っ直ぐしとかねぇとな…」
岩場に着くと、ちょうどあった大きな石に座らせ、座敷童の着物をまっすぐに伸ばす四月一日。
「あ、あの…っ」
「ん?」
「ご、ごめんなさい……服が…」
「服?」
さっき座敷童が池に落ちたとき、躊躇なく池に足を踏み入れたせいで四月一日のズボンが濡れてしまっていた。
「あぁ、いいよいいよ。気にしないで。実はさっき、俺も池に落ちて水浸しだったし」
不可抗力だったんだけど、と苦笑いして、四月一日は逆にごめんと謝る。
「それに、俺も驚かせちゃったし」
「いえっ、それは私が…!;//」
「あ」
「?」
着物を乾かすために曲げていた膝を伸ばして、ポケットを探り始める。
「髪、濡れてるね。ちょっと待って……はい」
「え…っ;!」
そう言って手渡されたのは白地に青いラインのシンプルなハンカチ。
「ちょっと濡れてるけど…拭かないよりはマシだと思うよ」
「………;///」
良いのかな…と迷っていると、使って、と柔らかい笑みを見せられてしまい、何も言えなくなる。
でもやっぱり遠慮して、端の方で毛先の水滴を拭った。
「……」
少しの間、居心地の悪くない沈黙が訪れて、またゆっくりと四月一日が話し始めた。
「……ごめんね、せっかく綺麗な音だったのに」
「え?」
「君が吹いてた笛。すごく綺麗だったから」
「!!;///あのっ、そのっ、そんな、こと…っ!;///………ありがとう…ございます////」
自分でもわかるぐらいかあっと頬が上気している。
「俺、多分あのままだったら道に迷ってたと思う。けど笛の音聞いて、こっちに来たら君がいて。
よかったよ、知り合いに会えて」
「あ…」
―…私も…会えてよかった…
「…も…です」
「え?」
「いえっ、あの…//…そ、そういえば、どうしてここに…?」
「あー…えーっと、話せば長いんだけど…端的に言うと、壺に吸い込まれて…
気付いたら喋る水仙がいっぱい咲いてて、あ、コイツがでかくなっちゃって元に戻すのに清浄な気が
たくさん必要だとかで…」
「…?」
「…ごめん、やっぱり最初から話すね…;」
「…はい//」
―ちゃんと、聞いてますから。
座敷童の表情には気付かず、
指先でたまにじゃれてくる管狐の相手をしながら、四月一日はいきさつを話した。